_______________________________
姫神「月のあかりはしみわたり」
_______________________________
湖上
<中原中也>
ポツカリ月が出ましたら
舟を浮べて出掛けませう
波はヒタヒタ打つでせう
風も少しはあるでせう
沖に出たらば暗いでせう、
櫂(かい)から滴垂(したた)る水の音は
昵懇(ちか)しいものに聞こえませう
あなたの言葉の杜切(とぎ)れ間を
月は聴き耳立てるでせう、
すこしは降りても来るでせう、
われら接唇(くちづけ)する時に
月は頭上にあるでせう
あなたはなほも、語るでせう
よしないことや拗言(すねごと)や
洩らさず私は聴くでせう
けれど漕ぐ手はやめないで
ポッカリ月が出ましたら
舟を浮べて出掛けませう
波はヒタヒタ打つでせう
風も少しはあるでせう
_______________________________
月
<中原中也>
今宵月は荷を食ひ過ぎてゐる
済製場の屋根にブラ下つた琵琶は
鳴るとしも想へぬ
石炭の匂ひがしたって怖けるには及ばぬ
灌木がその個性を砥いでゐる
姉妹は眠った
母親は紅殻色の格子を締めた!
さてベランダの上にだが
見れば銅貨が落ちてゐる、
いやメダルなのかア
これは今日昼落とした文子さんのだ
明日はこれを届けてやらう
ポケットに入れたが気にかゝる、
月は荷を食ひ過ぎてゐる
灌木がその個性を砥いでゐる
姉妹は眠った、
母親は紅殻色の格子を締めた!
_______________________________
月の光 その一
<中原中也>
月の光が照つてゐた
月の光が照つてゐた
お庭の隅の草叢(くさむら)に
隠れてゐるのは死んだ児だ
月の光が照つてゐた
月の光が照つてゐた
おや、チルシスとアマントが
芝生の上に出て来てる
ギタアを持つては来てゐるが
おつぽり出してあるばかり
月の光が照つてゐた
月の光が照つてゐた
姫神「月のあかりはしみわたり」
_______________________________
湖上
<中原中也>
ポツカリ月が出ましたら
舟を浮べて出掛けませう
波はヒタヒタ打つでせう
風も少しはあるでせう
沖に出たらば暗いでせう、
櫂(かい)から滴垂(したた)る水の音は
昵懇(ちか)しいものに聞こえませう
あなたの言葉の杜切(とぎ)れ間を
月は聴き耳立てるでせう、
すこしは降りても来るでせう、
われら接唇(くちづけ)する時に
月は頭上にあるでせう
あなたはなほも、語るでせう
よしないことや拗言(すねごと)や
洩らさず私は聴くでせう
けれど漕ぐ手はやめないで
ポッカリ月が出ましたら
舟を浮べて出掛けませう
波はヒタヒタ打つでせう
風も少しはあるでせう
_______________________________
月
<中原中也>
今宵月は荷を食ひ過ぎてゐる
済製場の屋根にブラ下つた琵琶は
鳴るとしも想へぬ
石炭の匂ひがしたって怖けるには及ばぬ
灌木がその個性を砥いでゐる
姉妹は眠った
母親は紅殻色の格子を締めた!
さてベランダの上にだが
見れば銅貨が落ちてゐる、
いやメダルなのかア
これは今日昼落とした文子さんのだ
明日はこれを届けてやらう
ポケットに入れたが気にかゝる、
月は荷を食ひ過ぎてゐる
灌木がその個性を砥いでゐる
姉妹は眠った、
母親は紅殻色の格子を締めた!
_______________________________
月の光 その一
<中原中也>
月の光が照つてゐた
月の光が照つてゐた
お庭の隅の草叢(くさむら)に
隠れてゐるのは死んだ児だ
月の光が照つてゐた
月の光が照つてゐた
おや、チルシスとアマントが
芝生の上に出て来てる
ギタアを持つては来てゐるが
おつぽり出してあるばかり
月の光が照つてゐた
月の光が照つてゐた
Category
🎵
ミュージック