I'm Giving the Disgraced Noble Lady I Rescued a Crash Course in Naughtiness [Episode 1 - 4]

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I'm Giving the Disgraced Noble Lady I Rescued a Crash Course in Naughtiness
Episode 1 - Episode 4

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Transcript
00:00:00あっち行くぞ!
00:00:01追え! 列隊に捕らえろ!
00:00:13あっちだ!
00:00:15待て! これ以上は行くな!
00:00:17どうした?
00:00:18この森の奥には魔王の屋敷がある
00:00:21魔王だと?
00:00:22ああ
00:00:23噂によると大の人間嫌いで
00:00:25屋敷に近づいた人間に 邪地暴虐の限りを尽くすと言われている
00:00:30違和感には信じがたいな
00:00:32こっちです!
00:00:34村人がドッグを目撃したと!
00:00:36ほんとか!
00:00:52ごめんね
00:00:54ごめんね ナファリオ
00:00:56何も言わずに飛び出して
00:00:58でも生きていればきっとまた会う
00:01:07また来る
00:01:23ゆらゆら二つの運命 巡り合った
00:01:31言葉を交わせば不思議さ
00:01:35優しい波紋が広がる
00:01:38孤独だった心にそっと
00:01:43澄んだ瞳で君は
00:01:46どんな景色を見てきたの?
00:01:50隠さないで痛みも
00:01:53全て分け合える
00:01:56さあ クルリクルリ踊ろう
00:01:59差し出した手を握ってみて
00:02:03止まっていた時間が
00:02:06回り始めるように
00:02:11いけない愛を
00:02:14君にあげるよ
00:02:17思わず笑みこぼれるほど
00:02:21素敵で幸せな時
00:02:24夢じゃないよ
00:02:27魔法をかけるよ
00:02:30このトキメキの名前を
00:02:34まだ知らない
00:02:37そうさ君は
00:02:38いけないエトランセス
00:02:48隣国の独府 消息不明に
00:02:51国外逃亡か
00:02:55この気配は
00:03:08魔物か
00:03:18家で娘かと思ったが
00:03:20さらばれた先から逃げてきたのか
00:03:22例えば
00:03:25こういうやつから
00:03:30随分なご挨拶だな
00:03:33初歩的な幻影魔法だ
00:03:36お前は
00:03:38お前は
00:03:40お前は
00:03:42お前は
00:03:45初歩的な幻影魔法だ
00:03:48ニールズ王国
00:03:49しかも
00:03:50王室直属のこの衛兵か
00:03:53そんなご立派な肩書きのものが
00:03:55一体何の用だ
00:04:02その女を渡せ
00:04:04そいつは我が国を恥ずかしめた
00:04:06重罪人だ
00:04:08こいつが
00:04:09約束しよう
00:04:11大人しく身柄を引き渡すのなら
00:04:13綺麗に被害は加えない
00:04:15だが
00:04:16かばい立てするならば
00:04:17容赦はしない
00:04:19なるほどな
00:04:21そういうことなら
00:04:23お断りだ
00:04:27うさぎくさい奴らと
00:04:28脆弱した暴れな少女だ
00:04:30どちらの肩を持つかと聞かれれば
00:04:33間違いなく後者だろう
00:04:36相手は両手が下がっている
00:04:38一斉にかかれ
00:04:40アイスバント
00:04:43アイスバント
00:04:49無影響魔法だと
00:04:55その白黒の髪
00:04:57まさか貴様が
00:04:58この森に住む魔王
00:05:00魔王だと
00:05:01本物か
00:05:02いやちょっと違うな
00:05:04大魔王だ
00:05:06ゲム
00:05:09さてと
00:05:14ここで何が起きた
00:05:16言ってみろ
00:05:18森を含まなく探索して
00:05:20女の痕跡が途絶えたので
00:05:23魔物に襲われたと結論付き
00:05:26報告のため
00:05:27帰国することにしました
00:05:29上出来だ
00:05:39時期に意識もはっきりして
00:05:42綺麗さっぱり記憶から消え去るだろう
00:06:00国が動くほどの仇罪人か
00:06:03とてもそうは見えないが
00:06:06林檎家の督婦
00:06:08消息不明に
00:06:09ニールズ王国にて繰り広げられた
00:06:11陰謀劇か
00:06:20目が覚めたか
00:06:22ど、どなたですか
00:06:24飲め
00:06:26は、はい
00:06:32どうして倒れていた
00:06:34森で迷って
00:06:36遠くにお屋敷が見えたんです
00:06:39そこに行こうとして
00:06:41それがこの屋敷だ
00:06:44林檎、ニールズ王国第二王子の婚約者
00:06:47シャーロット・エヴァンズ・ジョー
00:06:50ち、違うんです
00:06:52私は、私は
00:06:54警戒しなくてもいい
00:06:57俺は嘘をついているかどうか
00:06:59目を見ればわかる
00:07:01シャーロット
00:07:03お前の目には何の嘘もない
00:07:07え、おい、どうした
00:07:09どこか痛むのか
00:07:11初めて
00:07:13初めて信じてくれる人がいた
00:07:19少しは落ち着いたか
00:07:21はい
00:07:22どうして国を割れることになったか
00:07:24教えてくれるか
00:07:27本当に突然のことだったんです
00:07:33うたげの前にみんなに話がある
00:07:36シャーロット
00:07:37シャーロットはいるか
00:07:39シャーロット
00:07:40セシル王子との婚約が
00:07:42何年も前から決まっている
00:07:44合礼状ですよ
00:07:45そんな方がいらっしゃったのか
00:07:47ええ
00:07:48ここだけの話
00:07:50目かけの子らしいです
00:07:52私と二人がお話する姿
00:07:54初めてお見かけしますが
00:07:56シャーロット
00:07:57君の悪行の数々は調べがついている
00:08:03告げられたのは身に覚えのないことばかりで
00:08:06セシル王子の言葉を疑う人は
00:08:09誰もいませんでした
00:08:11よってシャーロット・エヴァンズ
00:08:13君を国家反逆罪で逮捕する
00:08:16そんな
00:08:17どうして
00:08:18私は
00:08:19私は
00:08:20私は
00:08:21私は
00:08:22私は
00:08:23私は
00:08:24そんな
00:08:25どうして
00:08:26君との婚約も破棄させてもらう
00:08:29ドックを牢に連れて行け
00:08:31はっ
00:08:34待って
00:08:35お願いです
00:08:36信じてください
00:08:37私は何もやってないんです
00:08:46私は何もやってないのに
00:08:49単純明快な陰謀劇だ
00:08:52おそらく王子は目掛けの子である彼女と結婚するのが嫌だったか
00:08:56他に好きな女でもできたんだろう
00:08:59すみません
00:09:00私なんかの話を
00:09:02助けていただいてありがとうございました
00:09:05
00:09:06これ以上のご迷惑はかけません
00:09:08お手が来る前にすぐにここを出て
00:09:11掃除は得意か
00:09:12
00:09:13この通り
00:09:14俺は掃除が苦手でな
00:09:16どうだ
00:09:17えっと
00:09:18人並みにはできると思いますけど
00:09:22完璧な答えだ
00:09:24俺がお前を雇ってやる
00:09:26
00:09:28名目は住み込みのメイドだ
00:09:30
00:09:31任せる仕事は家事全般
00:09:33手当はもちろん出し
00:09:35三食に加えておやつ付き
00:09:37部屋数は余っているし
00:09:39一人くらい増えても何の問題も
00:09:41あの
00:09:42先ほどの話を聞いてましたか
00:09:45私はお尋ね者なんですよ
00:09:47まあ確かに
00:09:49人と関わりたくない一心で森の奥に暮らしてるんだ
00:09:53お尋ね者をかくまうなんて本末転倒だ
00:09:56それでも
00:09:59実はだな
00:10:01俺も昔
00:10:02お前のように裏切られたことがあるんだ
00:10:05えっと
00:10:06あなたも
00:10:07アレンだ
00:10:08アレンクロホード
00:10:10今から3年前
00:10:12俺はとあるパーティーに勧誘された
00:10:15まだ見ぬ冒険と楽しい旅を無双した俺は
00:10:18彼らの仲間になった
00:10:20だが
00:10:21しかし
00:10:22奴らは俺を使って神殿の封印を暴き
00:10:26狙いの財宝が手に入ると
00:10:28俺を魔物の群れの中に放置した
00:10:30奴らは最初から俺を利用するつもりだったんだ
00:10:35ひどい
00:10:36そんなのひどいです
00:10:38仲間を騙すだなんて
00:10:40なんて純粋な奴なんだ
00:10:43俺の話を疑問も持たずに信じ込むとは
00:10:46あの時
00:10:47救いの手を差し伸べてくれる人は誰もいなかった
00:10:50だから俺は
00:10:51似た境遇のお前を放っておけないんだ
00:10:55アレンさん
00:10:58お気持ちは嬉しいです
00:11:00でもアレンさんのご迷惑になります
00:11:03お受けすることはできません
00:11:05そうか
00:11:06ならば
00:11:07最終手段だ
00:11:11たった今俺は自分に死の呪いをかけた
00:11:15え?
00:11:17お前がここで働くと言わない限り
00:11:19俺は呪いを解除しない
00:11:23つまり俺の心臓は
00:11:25今から3分後に活動を停止する
00:11:28はい
00:11:29さあ早く決断するがいい
00:11:32さもなくば
00:11:33お前のせいで無実な一般人が命を落とすことになるぞ
00:11:37なんでそうなるんですか
00:11:39ああと
00:11:40言い方が悪い人みたいですけど
00:11:42私を助けようとしてくれるいい人なんですよね
00:11:47もちろん俺は善良そのものだ
00:11:50さあどうするシャーロット
00:11:52残り2分31秒だ
00:11:54付け加えて言うなら
00:11:56すでに呼吸がしづらくなってきているぞ
00:11:59もっと自分を大事にしてください
00:12:02そういうわけでシャーロットは
00:12:041分も経たないうちに
00:12:06この屋敷で働くことを了承してくれた
00:12:12アレンさん
00:12:18終わりましたよ
00:12:21やはや素晴らしい仕事ぶりだ
00:12:24公爵家霊場とは思えないな
00:12:27お家ではいろいろお手伝いをしていましたから
00:12:30シャーロットを助けた時
00:12:32手先がかなり荒れていた
00:12:34公爵家霊場とは名ばかりで
00:12:36家では召使いのような立場だったのかもしれないな
00:12:40それに私は床を磨いただけです
00:12:43荷物は全部アレンさんが魔法で片付けてくれたじゃないですか
00:12:47ああすべて燃やせるゴミだったからな
00:12:50床掃除も手伝ってくださいましたし
00:12:53私いる意味あるんですか
00:12:56もちろんだと思う
00:12:57さっきまでの部屋の散らかり具合を見たろ
00:13:00俺はこの通り生活能力がまるでない
00:13:03一人だと片付けようとする気すら起きないのだ
00:13:07胸を張っておっしゃることじゃないと思うんです
00:13:11事実だからな
00:13:12そうかもしれないですけど
00:13:15えっと
00:13:16次はどんなお仕事をすればいいですか
00:13:19そうだな
00:13:22今はもういい
00:13:25あとは夕飯まで自由にしてくれ
00:13:29私が泥棒したらどうするんですか
00:13:32それも大丈夫だ
00:13:34昨日街であれこれ買い物して
00:13:37この家にはろくな現金もないからな
00:13:39すみません私のせいで
00:13:41何初期投資だ気にするな
00:13:45書斎から本を持ってきてもいいし
00:13:47庭をいじってくれてもいい
00:13:49好きにしろ
00:14:00これから俺はしばし仕事をする
00:14:02声をかけないでくれ
00:14:07はいわかりました
00:14:11困った人間は放っておけないが
00:14:13人付き合いは苦手だ
00:14:15今はまだ俺に恩義を感じているが
00:14:18時期に俺が嫌になって出ていくはずだ
00:14:21頃合いになったら盗みやすい場所に
00:14:23まとまった金でも置いておくか
00:14:26さて俺の数少ない趣味の時間だ
00:14:30先日公表された魔法理論についての研究論文に
00:14:34修正を入れまくって突き返してやる
00:14:39学会ではひどく恐れられて
00:14:41赤ペンの悪魔呼ばわりされているらしいが
00:14:45ダオのこと添削のペンに力が入るというものだ
00:14:54おっともうこんな時間か
00:14:57明かりをつけないと
00:15:01おーい
00:15:03お、おいシャーロット何をやってるんだ
00:15:06オーレンさんえっと自由にしていいとおっしゃったので
00:15:10床の木目を数えておりました
00:15:13床の木目
00:15:15暇で暇で仕方なかったとしても
00:15:17床の木目を数えるか
00:15:19シャーロット少し聞きたいんだが
00:15:22趣味はあるか
00:15:23趣味ですか
00:15:26特にありませんね
00:15:28な、なら家では空いた時間に何をしていた
00:15:32えっと花嫁修行の時間以外は
00:15:35お掃除や貼り物などのお仕事をしていましたから
00:15:39空いた時間というのは特に
00:15:41笑顔でなんと寂しいことを言う
00:15:44じゃあその花嫁修行とやらで楽しかったことは
00:15:48えっと楽しいというのはちょっと
00:15:51間違えて叱られてばかりでしたから
00:15:54で、では最近嬉しかった思い出は
00:15:57それはありましたよ
00:15:59おお
00:16:002ヶ月前、ナタリア
00:16:02妹が果物をくれたんです
00:16:05少し痛んでましたけど
00:16:07めったに食べさせていただけないご馳走だったので
00:16:10とっても嬉しかった
00:16:11オルフさん、なんだかお顔が怖いですよ
00:16:14人相の悪さは生まれつきだ!
00:16:17気にするな!
00:16:18俺でさえ
00:16:19魔法学院時代は毎日
00:16:22教授を質問責めにしてなびなびにさせたり
00:16:25法薬の実験でいくつもの教室を吹き飛ばしたりして
00:16:28楽しい時を過ごしたというのに
00:16:32そんな人生でトップクラスに楽しいはずの時を
00:16:35趣味も幸せな思い出もなく
00:16:37我激苦の果てには
00:16:41よし、決めたぞ
00:16:42ジャーロット、俺はお前に
00:16:44この世のすべてのいけないことを教え込む
00:16:48はい?
00:16:50帰ったぞ
00:16:53えっと、これは一体
00:16:56大丈夫なんですか?
00:16:58現金はないって
00:17:00心配ない
00:17:01魔法道具を売ったんだ
00:17:03結構な金額になったぞ
00:17:05先ほど俺はお前に言ったな
00:17:07この世のすべてのいけないことを教え込むと
00:17:10おっしゃってましたけど
00:17:12いけないことって?
00:17:14喜びと楽しみだ
00:17:16だが、俺が言ったのは
00:17:19道儀に反するタイプの喜びだ
00:17:23いけないことというのは楽しいんだ
00:17:26癖になるほどな
00:17:30お前は今時珍しいくらいの素直で真面目な人間だ
00:17:34どうせ公爵家の人間に反抗したこともないのだろう
00:17:38それは、私なんかを置いてくださる方々ですし
00:17:43反抗なんて
00:17:44家族というよりも
00:17:46飼い主に怯えるようなものに
00:17:48これから言わせれば不健全だ
00:17:50だから、これからお前にいけないことを教えてやる
00:17:56お前はその快楽に溺れ
00:17:58本能のままに赴く獣になるだろう
00:18:02なんだか怖いです、アーレンさん
00:18:04それに、悪いことはしちゃいけないんですよ
00:18:09安心しろ
00:18:10法に触れることはしない
00:18:12低粛な妻や厳格な教師
00:18:15模範的な聖職者さえも虜になっている
00:18:18いけないことだ
00:18:20そのいけないことって何なんですか
00:18:23教えてやろう
00:18:25さあ、その目に焼き付けろ
00:18:27最初のいけないこと
00:18:33ケーキ?
00:18:34驚くのはまだ早いぞ
00:18:39えっと、これは
00:18:41今日の晩飯だ
00:18:43食べて飲んで大いに騒げ
00:18:45これが今日のいけないことだ
00:18:51ダメですよ、アーレンさん
00:18:53晩ご飯はちゃんと食べないと
00:18:55お菓子ばっかりじゃ栄養が偏ります
00:18:58うむ、予想通りかつ模範的な反応だ
00:19:02それこそ落とし甲斐があるというもの
00:19:05公爵家ではろくに食べさせてもらえなかったのだろう
00:19:09それは
00:19:10表面上としては家族と扱っても
00:19:13家の中では下場だらけ同然だったのだろう
00:19:16これが店の一番人気らしい
00:19:19ほら、甘いケーキだぞ
00:19:22でも、お夕飯にケーキをいただくなんてダメです
00:19:26それに、アーレンさんにこれ以上
00:19:28よくしていただくわけには
00:19:30うむ、だがこんなに綺麗なケーキだぞ
00:19:34食べないと作ったパティシエに悪くないか
00:19:38それに、今のお前を雇っているのは誰だ
00:19:41アーレンさんです
00:19:43その通り、雇い主の命令は絶対だ
00:19:48だから今日はこれを好きなだけ食え
00:19:51それが仕事だ
00:19:53そんなめちゃくちゃな
00:19:55これ以上抵抗するのなら
00:19:57また死の呪いをかけるぞ
00:19:59もちろんこの俺に
00:20:01だから、ご自分を大切にしてくださいってば
00:20:05わかりました、ありがたくいただきます
00:20:08最初からそうしておけばいいのだ
00:20:11それじゃあ、いただきます
00:20:13けど、先にアーレンさんが選んでください
00:20:17私は残ったもので構いませんので
00:20:20いや、俺は甘いものは好かんからな
00:20:23えっ、ひょっとしてこれ全部私のために?
00:20:27今さら気づいたのか?
00:20:29わざわざお金を用意して
00:20:31ど、どうしてそんなことをしたんですか?
00:20:34どうしてって、お前が喜ぶと思ったからだな
00:20:40どうした?ひょっとして甘いものは苦手か?
00:20:43い、いえ、そんなことは
00:20:45なら、さっさと食え
00:20:47はい
00:20:49私のために
00:20:56ど、どうだ?うまいか?
00:20:59おいしいです
00:21:00そうか
00:21:04ひょっとして口に合わなかったか?
00:21:07ち、違うんです
00:21:09誰かが私のために何かをしてくれるなんて
00:21:14優しくしてくれるなんて
00:21:17そんなことこれまで全然なくて
00:21:20私なんかがこんな
00:21:22こんな幸せを感じてもいいんでしょうか?
00:21:27馬鹿を言え、この程度が幸せだと?
00:21:31笑わせるな、こんなのまだ序の口だ
00:21:34これから俺はお前にこの世のすべての悦楽を教え込む
00:21:38泣いても叫んでも容赦はしない
00:21:43決めた
00:21:45おいしいものをたくさん食べさせて
00:21:47世界中のいろんな場所に連れて行く
00:21:50楽しいことも嬉しいことも飽きるまで味合わせてやる
00:21:54そして行方は世界で一番幸せだと胸を張って言えるまでに変えてやる
00:22:00どうしてそんなに見ず知らずの私に優しくしてくれるんですか?
00:22:04さあな、俺にもわからん
00:22:07だがやると決めたからには徹底的にだ
00:22:10お前に誓おう
00:22:12お前が俺の前にいる限り
00:22:14この世のすべてのいけないことを教えてやるとな
00:22:18でも、私は何もお返しできませんよ
00:22:22そんなものは必要ない
00:22:24俺の趣味にいやいや付き合わされていると思えばいいだろう
00:22:29お優しいのに変な人なんですね
00:22:32ほら、まだたくさんあるぞ
00:22:34食え
00:22:35そんなに食べられませんよ
00:22:37アレンさんもいかがですか?
00:22:39だから俺は甘いものは
00:22:43いや、せっかくだしご商売に預かろうか
00:22:47はい、一緒に食べたらもっとおいしいはずですよ
00:22:54意外といけるな
00:22:56ほら、お前も食べてみろ
00:23:03おいしいです
00:23:06そ、それはよかった
00:23:12人付き合いは苦手だが、せいぜい頑張ろう
00:23:18さあさあ、遠慮はいらんだ
00:23:26客船は魔王か
00:23:34俺にとってシャーロットは偶然であった他人でしかなかった
00:23:38昨日までは
00:23:40シャーロット、俺はお前にこの世のすべてのいけないことを教え込む
00:23:45はい?
00:23:47最初のいけないことは
00:23:50ケーキ
00:23:55まさかケーキごときであれほどまでに喜ぶとはな
00:24:03魔法で保存した残りのケーキを毎日少しずつ食べるらしい
00:24:09だが、食べ物だけでは芸がない
00:24:12もっとだ
00:24:14もっとあいつにこれまで味わったことのない経験をさせてやらないと
00:24:20さっそく思いついたぞ
00:24:34まいったな、いつの間に寝てたんだ
00:24:40しかしあれだけいろいろ案が出たんだ
00:24:42時間をかけた甲斐があるというものは
00:24:46これが深夜まであれやこれやと考えた
00:24:49いけないことリストだ
00:24:52俺の天才的な頭脳が編み出した奇策
00:24:55さぞかしシャーロットは喜ぶことだろう
00:25:05な、なんだこれは
00:25:08これで喜ぶのは俺だけだ
00:25:10また考えよう
00:25:16おはようございます、アレンさん
00:25:19お早いんですね
00:25:21ああ、書斎で寝てしまってな
00:25:24徹夜で書いたノートのことはひとまず黙っておこう
00:25:27アレンさん、もしかして徹夜でお仕事を?
00:25:31先ほどあくびしてらしたので健康に悪いですよ
00:25:36ああ、だからこれから寝直すんだ
00:25:40朝食は一人で食べてくれ
00:25:42わ、わかりました
00:25:44お昼になったら起こしましょうか
00:25:47頼む
00:25:48ところで、なんだそれ
00:25:50あ、ほうきです
00:25:52玄関のお掃除をしようと思いまして
00:25:55確かそんなものがあったな
00:25:57ボロボロだったはずだ
00:25:59あ、ダメでしたか?
00:26:01あ、いや、別に問題はないが
00:26:04必要な場所は掃除し終えたはずだ
00:26:07そんなことまで頼んでいないぞ
00:26:10お世話になっている身ですから
00:26:12自分からいろいろお仕事しなきゃと思いまして
00:26:15真面目なやつだ
00:26:17脳梗、肌ツヤ、呼吸のリズム、体調に問題は見当たらない
00:26:22掃除を任せてもいいのだが
00:26:27朝くらいゆっくりしてもいいんだぞ
00:26:30ええ、でも習慣ですから
00:26:34あ、ああ
00:26:36屋敷でも毎日掃除していたのか
00:26:39公爵家なのだろ
00:26:43腐っても実家は公爵家だ
00:26:45なら使用人は吐いて捨てるほどいただろう
00:26:49それなのにあえて掃除をさせる理由は
00:26:52十中八九、愉快なものではないはずだ
00:26:56使用人同然どころか
00:26:58それ以下の扱いを受け続け
00:27:00無実の罪で国を追われたのだから
00:27:03あ、アレンさん
00:27:06それじゃあ、お、おやすみなさい
00:27:09お掃除は静かにしますね
00:27:14あいつは人のことを決して悪く言わないな
00:27:17家族や元凶となった元婚約者の王子にも
00:27:21恨み事の一つも吐かない
00:27:23もし俺ならどいつもこいつも徹底的に叩き潰すところなのだが
00:27:29恨んでないというよりは
00:27:31恨みを抱けるような対象ではないのか
00:27:34仮に思うところがあったとしても
00:27:37口に出すことをためらっている
00:27:39そんなけがいがした
00:27:41その根底には
00:27:43彼らに対する恐怖感や
00:27:45自己肯定感の低さがあるのだろう
00:27:49おはようございます
00:27:51おはよ
00:27:52ゆ、ゆるしろ様ですね
00:27:54あ、えっと
00:27:55ちょっと待った!
00:27:57あ、それは
00:27:59ガレンさん?
00:28:01にゃあ
00:28:05すまない
00:28:06最近雇ったメイドでな
00:28:08人見知りするタイプだ
00:28:10はじめまして!
00:28:11迅速安全超カワイイが持った穴
00:28:13タピロス運送車の配達員
00:28:15にゃあですにゃあ
00:28:18俺の郵便物をこいつがいつも運んでくれて
00:28:22よろしくお願いします
00:28:24へえ
00:28:25メイドさんを雇う会商があったんですにゃあ
00:28:28魔王さん
00:28:29ま、魔王?
00:28:32あだなだあだな
00:28:33不名誉なことだ
00:28:35魔王さん
00:28:36そちらのメイドさん
00:28:38なんか見たことある顔ですにゃあ
00:28:41具体的には最近の新聞で
00:28:47おはようございます
00:28:49最近の新聞で
00:28:54今の反応
00:28:56ほとんど固定したようなものだ
00:28:58ここはなるべく穏便に
00:29:00いざとなれば
00:29:02ミヤハ
00:29:03これには訳が
00:29:05魔王さん
00:29:06大丈夫ですにゃあ
00:29:07タピロス運送車はお得意さま第一ですにゃあ
00:29:11お得意さまのお家のメイドさんが
00:29:13どこの誰だろうと知ってくっちゃないですにゃあ
00:29:17感謝する
00:29:19いったい何のことですにゃあ
00:29:23ありがとうございます
00:29:26いいってことですにゃあ
00:29:28お隣のニールズ王国は
00:29:29うちの会社の縄張り街ですからにゃあ
00:29:32縄張り内だったらどうしてたんだ
00:29:35何その顔
00:29:37どうですかにゃあ
00:29:39この反応は危なかった
00:29:42これが本日のお届け物ですにゃあ
00:29:45ミヤハ
00:29:46ついでに週貨も頼めるか
00:29:48もちろんですにゃあ
00:29:49何ですかそれ
00:29:51街の魔法点に卸す薬だ
00:29:54割らないように気をつけてくれ
00:29:56わかってますにゃあ
00:29:58素晴らしい魔法薬だと
00:30:00街で大評判ですからにゃあ
00:30:02アレンさん
00:30:03魔法薬を売って暮らしてたんですね
00:30:06街には住まないのですにゃあ
00:30:08そっちの方が簡単に稼げますのに
00:30:12人が
00:30:15街は人が多いからな
00:30:19相変わらずの人嫌いですにゃあ
00:30:22大若いんだからもっと活発に生きないと
00:30:25余計なお世話だ
00:30:27人が怖い顔してるから
00:30:29街の人たちから魔王と呼ばれてるんですにゃあ
00:30:35まあ確かに
00:30:37街外に住む人相の悪い魔法使いが
00:30:40噂になるのも当然か
00:30:43この先にあるんだよな
00:30:45魔王の屋敷が
00:30:47魔王はこの森の奥にいる
00:30:50屋敷に近づいた人間に魔法をかけて
00:30:53操り人形にしてしまうらしいぜ
00:30:55魔王の屋敷には迷い込んだ人間が
00:30:58たくさん飾られてるってわけか
00:31:01やめようよ
00:31:03子供だけで入っちゃダメだって言われてるし
00:31:06ビビってんじゃねえよ
00:31:08行くわ
00:31:09魔王なんて俺が退治してやる
00:31:13このあたりは物騒だから気をつけろ
00:31:20物騒な名のせいで
00:31:22子供たちが肝試しに来る始末だ
00:31:25俺は静かに暮らしているだけなんだが
00:31:28魔王って本当にただのあだ名だったんですね
00:31:31当然だ
00:31:33俺はただの魔法使いだ
00:31:35人と関わりたくないのに
00:31:37だからといって人を見捨てられない
00:31:40人嫌いのおひとえしとか難解すぎますにゃ
00:31:44いい加減趣味とか生き甲斐とか見つけたほうがいいですにゃ
00:31:48だから余計なお世話だと
00:31:52なあミヤハ
00:31:54確かお前の会社は通販事業もやっていたはずだよな
00:31:57はいですにゃ
00:31:59日曜日がメインになりますが
00:32:01ご要望とあれば何でも手入れてご覧に入れますにゃ
00:32:05こちらがパンフレットになりますにゃ
00:32:08頼もしい限りだな
00:32:10どれどれ
00:32:12なるほど
00:32:14これはいい
00:32:16そらシャーロット
00:32:18はい
00:32:19昨日あらかた生活用品は買ってきたと思うが
00:32:22その中から欲しいものをリストアップしてくれ
00:32:25注文しよう
00:32:27俺は女性が必要とするものはわからないからな
00:32:30はい
00:32:32ご注文は以上ですかにゃ
00:32:34はいこれでお願いします
00:32:37アレイさん必ずお返ししますね
00:32:40いや俺が出すから気にするな
00:32:43それは悪いです
00:32:45昨日はケーキもいただきましたし
00:32:48いいから好きなものを買うといい
00:32:51少しでも遠慮が見えたら
00:32:53見えたら
00:32:54このパンフレットに持っている全商品を買い揃えてやるからな
00:32:59なんでそんなに極端なんですか
00:33:01わかったのなら遠慮せずちゃんと選ぶんだぞ
00:33:04わかりましたから
00:33:07ミヤハさん
00:33:10メイドさんも大変そうですにゃ
00:33:13魔王さんの傍許が嫌なら
00:33:15きっと言わなきゃダメですにゃ
00:33:18い、いえ
00:33:19お世話になっている身ですしそんなことは
00:33:22ミヤハだったらこんな傲慢な態度
00:33:26必殺猫探知もしていかないですにゃ
00:33:29いいですかにゃ
00:33:31ストレスや嫌なことはこうして発散するに限るのですにゃ
00:33:35お得意さまに随分な物言いだな
00:33:38ミヤハさん
00:33:39それだ
00:33:41にゃ
00:33:49かくして次にシャーロットに貸す
00:33:52いけないことが決定した
00:34:01ご注文の品お届けにあがりましたにゃ
00:34:05こっちはシャーロットちゃんから頼まれてた商品ですにゃ
00:34:10うんご苦労
00:34:12ありがとうございます
00:34:14シャーロットちゃんもきっと気に入るはずなのですにゃ
00:34:19いつの間に呼び方が
00:34:21どうやらミヤハに懐かれたみたいだな
00:34:24でこっちは魔王さんの注文の品ですにゃ
00:34:29何ですかこれ
00:34:32うん上々の品だな
00:34:37それにしても魔王さんてがこんな物をどうするつもりなんですね
00:34:41当然使うんだが
00:34:43えーインドアっぽい魔王さんが
00:34:46違う違う俺じゃなくて
00:34:49シャーロットが使うんだ
00:34:51えっ私ですか
00:34:53へーシャーロットちゃんって意外とアクティブなんですにゃ
00:34:57いったい何を買われたんですか
00:35:02見て驚くなよ
00:35:04お前が喜ぶ物を用意した
00:35:12どうだ
00:35:13えっとこれは
00:35:15サンドバッグですにゃ
00:35:17ボクシングの練習やエクササイズで使うスポーツ用品なのですにゃ
00:35:23いやあの待ってください
00:35:26なんでこれを私が使うんですか
00:35:29ひょっとして運動のためとか
00:35:31したいがそうではない
00:35:34これが今回のいけないことだ
00:35:37い、いけないこと
00:35:39そうだ
00:35:40にゃにゃーなんでそんなキメ顔で
00:35:44いけないことって何ですにゃ
00:35:46そういうプレイですかにゃ
00:35:48プ、プレイ?
00:35:50魔王さん趣味がひどすぎですにゃ
00:35:52本来最低の女の子に
00:35:55どんな想像をしてるんだ危険なことはせん
00:36:00ん?
00:36:02準備完了
00:36:03さあストレス発散の時間だ
00:36:06こいつを思いっきりぶん殴れ
00:36:09こ、これって私の
00:36:12うん元婚約者だな
00:36:19お前に必要なのは全てを受け入れることじゃない
00:36:22怒ることだ
00:36:23怒ること
00:36:25その通り
00:36:26時には我慢も大事だが
00:36:28解放することも必要だ
00:36:31そうしないといつか必ず破綻する
00:36:34やり過ごした感情が消えることはない
00:36:37心の奥底に溜まり続け
00:36:39やがて氾濫して己を壊す
00:36:42シャーロットにそんな思いをさせたくない
00:36:45なに
00:36:46殴れと言われても
00:36:48はじめは誰しも戸惑うものだ
00:36:50だが次第にそれが癖になる
00:36:54言い方が一日危なくぽんとはどうしてですにゃ
00:36:57で、でも私は怒ってなんかいませんから
00:37:01俺は写真を探すため
00:37:03いくつもの新聞に目を通した
00:37:06お前がいかにニールズ王国で悪者として扱われているかを知り
00:37:10とてもイラついた
00:37:12全てを奪われ尊厳を蹂躙され
00:37:15あの国には居場所はもうないというのに
00:37:18どうしてお前は怒らないんだ
00:37:20きっと王子様には何か理由があったんですよ
00:37:24何か理由があれば
00:37:26お前をボロ雑巾のように捨てていいというのか
00:37:29家族に受けたひどい扱いも許すというのか
00:37:32魔王さん少し言い過ぎでは
00:37:35仕方ありません
00:37:37家族には私をここまで育ててくださった御恩が
00:37:41王子様には私のようなものが婚約書で
00:37:44迷惑をおかけした申し訳なさがあります
00:37:48恨むなんてできません
00:37:52どうやら問題の根はあまりに深い
00:37:55なぜだ
00:37:56俺の考えたプランは完璧だったはず
00:37:59俺が立てていたプランはこうだ
00:38:02その一
00:38:03シャーロットに恨みを自覚させる
00:38:05許せません
00:38:07その二
00:38:08そのまま隣国に乗り込んで王子の悪事を暴ける
00:38:11どうして分かったのだ
00:38:14その三
00:38:15その三
00:38:16シャーロットの無実の罪は晴れ
00:38:18悪党どもは捕まる
00:38:19覚えてろ
00:38:21その四
00:38:22全てを万事可決へ
00:38:23ハッピーエンドだ
00:38:24やりましたねアレンさん
00:38:27だがこれだけでシャーロットの心を癒すことはできないだろう
00:38:31彼女は自分の心ときちんと向き合えていない
00:38:35己の心を抑圧することに慣れてしまっている
00:38:39今のままでは王子が断罪されたとしても
00:38:42自分のせいで不幸になったと気にやむだろうな
00:38:46あの魔王さん
00:38:48お客さんの子が手に首を突っ込むのは
00:38:51あまり上品とは言えないのですが
00:38:54もうちょっとだけそっとしておいたほうがいいと思うのですが
00:38:58それには俺もほぼ同意だがな
00:39:01ほぼ
00:39:02シャーロットの傷は深い
00:39:04だからといって
00:39:06ただ時が解決するのを待つのは
00:39:08俺の性にあわん
00:39:10シャーロット
00:39:11はい
00:39:14サンドバックの代わりに
00:39:16サンドバックの代わりに俺を殴れ
00:39:20はい
00:39:24聞こえなかったのか
00:39:26俺を殴れと言ったんだが
00:39:30聞こえてましたけど
00:39:31魔王さんそういう趣味もあったのですかニャー
00:39:35勘違いするな
00:39:37これもいけないことの一環だ
00:39:39さあシャーロット
00:39:41俺を思いっきり
00:39:43そんなことできません
00:39:45シャーロット
00:39:46アレンさんにはお世話になっていますし
00:39:49殴るだなんて
00:39:50できるできないじゃない
00:39:53やるんだ
00:40:09アレンさん
00:40:21今のは何なんですか
00:40:23勝手にグローブが動いて
00:40:25魔法だ
00:40:27お前の右腕を操って
00:40:30俺を殴らせたんだ
00:40:32プロボクサーのコークスクリューパンチを再現してみた
00:40:36シャーロット
00:40:37いいパンチだったぞ
00:40:39ニャーは一体何を見せられているのですニャー
00:40:43違う
00:40:47大丈夫だこのぐらい
00:40:49いいかシャーロット
00:40:51これだけは言っておく
00:40:53何でしょう
00:40:55俺は殴られようと踏まれようと
00:40:58どんな悪態をつかれようと
00:41:00たとえ何があっても
00:41:02お前を見捨てない
00:41:04俺はシャーロットの味方だ
00:41:07ここはお前のいた屋敷じゃない
00:41:09何を感じてもいいし
00:41:11何を言ってもいい
00:41:13お前は自由なんだ
00:41:15自由
00:41:18それを言うために私に殴らせたんですか
00:41:22当たり前だろう
00:41:24ここまでしないと考えを変えないだろうからな
00:41:27だからって
00:41:29罪にも程があります
00:41:33なんだ
00:41:34怒るときにはちゃんと怒れるんじゃないか
00:41:37そうは言ってもな
00:41:39この程度の怪我はすぐに治せるんだ
00:41:42ほらこの弾
00:41:47取り返しのつかないことなんてない
00:41:50だからお前には
00:41:51あらゆるものを怖がらずにいて欲しいんだ
00:41:54アレンさん
00:41:56でもでも
00:41:57アレンさんが痛い思いをした事実は変わりませんよね
00:42:01それはまあそうだが
00:42:03何なのキスにゃこのやりとりは
00:42:06こういうことは今後一切やめてください
00:42:10心臓がいくつあっても足りません
00:42:17わ、わかった
00:42:19約束する
00:42:23これまで私はいろんなことを怖がって生きてきました
00:42:27でももういいんですね
00:42:29もちろんだ
00:42:31私頑張ります
00:42:34すぐには無理かもしれませんけど
00:42:36自分の思っていることをちゃんと言えるようになりたいです
00:42:41急がなくていい
00:42:43俺はいつまでだって付き合うからな
00:42:48当初の予定とは随分外れたが
00:42:51シャーロットはここからやり直すんだ
00:42:54俺はゆっくりそれを見守ろう
00:42:56ニャハーいいお話ですニャー
00:43:00ニャハーすまないな
00:43:02せっかく持ってきてもらったのに
00:43:05こいつを使うのは当分先になりそうだ
00:43:08いやいやとんでもないですニャー
00:43:10今後ともサピロス運送車をご利益にお願いしますニャー
00:43:15もちろんそのつもりだがなぜか
00:43:18待ってこれからいろいろご利用だと思いますからニャー
00:43:23ダブルベッドの指輪にデイリースーツの指輪になりますかニャー
00:43:28扉の腕がなりますニャー
00:43:32なんでそんなものが必要に
00:43:54見つけた
00:43:56もう逃がさないよ
00:44:08シャーロットコーヒーと紅茶どっちが好きだ
00:44:13アレンさんと同じものは
00:44:19俺は特製ケロマズ栄養ポーションにするが
00:44:23本当に同じものでいいか
00:44:25お紅茶で
00:44:29言っただろ素直になれと
00:44:31飲み物を選んだだけですよ大げさです
00:44:35だがこれまではそんな自己主張もできなかったんだろ
00:44:41確かに自分で何かを決めたのなんか
00:44:44お屋敷に引き取られてからは今回の家出くらいです
00:44:48家出の次がこれかなかなか重大な決断続きだな
00:44:52そうですか
00:44:54今後も何か挑戦したいことがあれば何でも言ってくれ
00:44:58挑戦したいことですか
00:45:10見つけた
00:45:13今後の参考のために聞かせてくれ
00:45:16どうやってここを
00:45:17簡単よ手紙に付着した花粉からこの地方を割り出して
00:45:22変わり者の魔法使いはいないか
00:45:24しらみつぶしに聞いて回ったの
00:45:28無駄な行動力は相変わらずか
00:45:31アレンさんこちらの方は
00:45:35それはこっちのセリフなんだけど
00:45:38まあいいわ
00:45:40私は魔法技師見習いのエルーカクラフォード
00:45:43鬼の妹よ
00:45:45妹さん
00:45:46ギリノだったな
00:45:48ギリノ
00:45:52俺は幼少期に親を亡くしてな
00:45:55クロフォード家に引き取られたんだ
00:45:57エルーカはそこの娘だ
00:45:59すみません
00:46:01ご家庭の事情を詮索して
00:46:04別に構わんぞ
00:46:05ちなみにエルーカはお前と同い年だ
00:46:08私は構うんだけど
00:46:11この人誰
00:46:12鬼の彼女
00:46:14彼女
00:46:16違うぞ
00:46:18息ぴったり
00:46:21いいかエルーカ
00:46:23こんな性格破綻
00:46:24社会不適合者兼
00:46:26陰謙天才魔法使いと恋長などと誤解されては
00:46:29シャーロットとしてはヘドが出る思いだろう
00:46:32こいつの名誉のためにも
00:46:34そこはきちんと否定しておくぞ
00:46:36そんなこと思ってません
00:46:39自分で言ってて悲しくならない
00:46:42事実だからな
00:46:44威張ることじゃないし
00:46:46で彼女じゃないなら誰なの
00:46:50そ、それは
00:46:52こいつはシャーロット・エヴァンズ
00:46:55隣国から逃げてきたお尋ね者だ
00:46:58アレンさん
00:47:00隠しても無駄だ
00:47:02どうせこいつは自力で真相にたどり着く
00:47:05ならば正直に話した方が早い
00:47:09アレンさんがそうおっしゃるなら
00:47:12ではまず
00:47:13俺とシャーロットの出会いについてだが
00:47:17つまり無実の罪で国を追われたこの子をかくまって
00:47:21今いろいろといけないことを教え込んでいると
00:47:25はぁ
00:47:26お兄はかねがねバカだと思っていたけど違ったわ
00:47:29大バカ者よ
00:47:31ほう?なぜだ?
00:47:33そんなの決まっているでしょ
00:47:36食べ物与えたり
00:47:37自分を殴らせたりするんじゃなくて
00:47:40もっと女の子が喜ぶようないけないことを
00:47:43教えてあげなさいよ
00:47:45そこ見どころはそこなんですか
00:47:49これまで大変だったでしょ
00:47:51私にできることがあったら何でも言ってちょうだい
00:47:56あ、あの本当にいいんですか
00:47:59自分で言うのもなんですけど
00:48:01私怪しいですよ
00:48:03でもお兄が信じたんでしょ
00:48:05だったら大丈夫よ
00:48:07お兄はあんなんだけど
00:48:09悪人を見分ける嗅覚だけはマジで犬並みだから
00:48:15で、本来の要件はなんだ
00:48:18お兄を連れ戻しに来たんだけど
00:48:20もうそんなのどうでもいいわ
00:48:22いつまでもシャーロットをかわいがる
00:48:25いけないことを教えてあげる
00:48:28お前がシャーロットに
00:48:30笑わせるな
00:48:32どういう意味を
00:48:34シャーロットにいけないことを一番うまく教えられるのはこの俺だ
00:48:38お前の出る幕はない
00:48:41女には女にしか教えられない喜びってもんがあるのよ
00:48:45お前が言え
00:48:46俺は四六時中いけないことについて考えているんだぞ
00:48:50お前が叶うわけがないだろ
00:48:52何よ
00:48:53私のテクニックでシャーロットを骨抜きにしてやるんだから
00:48:57ここで言い合っても拉致があかないわね
00:49:00だったら久々にやるか
00:49:02どっちがシャーロットにいけないことを教えられるか
00:49:05一体何の争いなんですか
00:49:08勝負だ
00:49:11シェイプシフト
00:49:21髪が黒くなってます
00:49:30簡単な変装魔法だ
00:49:33髪型も変えれば正体がバレることもないだろ
00:49:36アレンジは私に任せて
00:49:40魔法はバッチリだな
00:49:44だが家に帰ったらすぐに解くぞ
00:49:48なんで黒髪もいいじゃんか
00:49:51黒も悪くないがやはりシャーロットに似合うのは金色だ
00:49:55俺はあっちが一番好きだ
00:50:01何かおかしかったか
00:50:03いえ何でもないで
00:50:05ちょっとお兄もう点数稼ぎ
00:50:09何がだ
00:50:11わかんないならいい
00:50:13よし髪はこれで完成
00:50:22私もお兄に負けてらんない
00:50:24行くよシャーロット
00:50:29何をするつもりだ
00:50:31そんなの決まってるじゃない
00:50:33いけないこと解決
00:50:35私が教えるのはどんな女の子も喜ぶオシャレよ
00:50:48ほらこっちも似合うよシャーロット
00:50:53間違いで気まずい
00:50:55かといって勝負中に逃げ出すわけにはいかない
00:51:00勝負
00:51:02懐かしいな
00:51:04俺が黒ホード家に引き取られた時も
00:51:08勝負よ
00:51:16チェックメイト
00:51:18勝負を仕掛けてきてはコテンパンにされ
00:51:21それでもあいつは挑み続けてきた
00:51:24今度こそ負けないだから
00:51:27ひょっとしてあれはあいつなりに俺と打ち解けようとしていたのか
00:51:32ちょっとお兄
00:51:35見て見て
00:51:39ちょっと恥ずかしいです
00:51:42超似合ってるよ
00:51:47ほらお兄の感想は
00:51:49出会った頃のドレスに比べたらずっと彼女に似合っている
00:51:54だがその短すぎないか
00:51:58これくらい普通だし
00:52:00しかし
00:52:02これまでこんな短いスカートなど履いたことがないのだろう
00:52:06食事をしっかりとっているおかげか
00:52:09健康的でふっくらしている
00:52:14それにすべすべしていて
00:52:22アレンさん
00:52:24いや問題ない
00:52:26心を鎮める必要があって
00:52:29ずっと心臓を止めただけだ
00:52:31そんな気軽に止めていいものなんですか
00:52:34お兄はいつも無茶しすぎ
00:52:36ほらシャロットは次々
00:52:48それで私は何をすればいい
00:52:51ニールズ王国の現状を知りたい
00:52:53特にシャロットの扱いがどうなっているのか
00:52:56任せて
00:52:58ニールズ王国にもパパの知り合いがいるだろうし
00:53:01それとなく探ってみるよ
00:53:03ついでに例の王子とか
00:53:05家のこととかも調べてあげようか
00:53:07いやそっちはまだいい
00:53:10ありゃ泳がせとく気
00:53:13気にならないといえば嘘になる
00:53:15シャロットを貶めたのがどんな人間なのか
00:53:18屋敷でどんな扱いを受けていたのか
00:53:21知ってしまったら黙ってなどいられない
00:53:25シャロットの気持ちも無視して
00:53:27今はあの国に乗り込んでしまう
00:53:29だから当分はいい
00:53:32なんだその顔は
00:53:34いやお兄も変わったなって
00:53:37お兄が誰かを気にかけるなんて
00:53:39これまでなかったじゃん
00:53:41いいことだよ
00:53:42いいことなのか
00:53:44あの
00:53:45どうかした
00:53:46すみません
00:53:48ちょっと背中の金具がうまく止められなくて
00:53:51ああはいはいやるよ
00:53:56じゃあ後ろを向いてくれる
00:54:01どうかしましたか
00:54:04確かにこの金具止めるの難しいね
00:54:09お待たせ今度も超かわいいよ
00:54:17今度は露出度が高くないか
00:54:19お兄は固いな
00:54:22これくらい攻めないと
00:54:23私は勝負できないんだよ
00:54:25何と戦っているんだ
00:54:26世の女性陣は
00:54:28そんなことより見てみて
00:54:31この服背中がぱっくりで
00:54:32すごいことになってるんだよ
00:54:35ちょっとまだ心の準備が
00:54:43お兄ちゃんと見てあげて
00:54:46アレンさんどうしました
00:54:49いや何でもない
00:54:51露出度が高いのはいただけないが
00:54:53似合っているぞ
00:54:55本当ですか
00:54:57ああ自信を持て
00:55:00形状から見て無知か
00:55:02皮膚や骨を断つほどの威力はなく
00:55:05苦痛と恐怖を与えるだけの拷問
00:55:08無知ならば次の日には痛みも消えるだろう
00:55:10ただ呪いのように跡が残るだけ
00:55:13ゆえに本人も傷跡に気づいていない
00:55:27温かい
00:55:29服にほつれがあったから
00:55:30直しておいたんだ
00:55:32ありがとうございます
00:55:34傷跡は簡単な魔法できれいに消せた
00:55:37つまりシャーロットは
00:55:38まともな治療すら受けさせて
00:55:39もらえなかったということだ
00:55:42生まれを理由に疎み
00:55:43礼軍するのはまだわかる
00:55:45だがあの無知の後からは
00:55:47そうしたものを超えた憎しみを感じた
00:55:50シャーロットがそのような感情を向けられる言われなど
00:55:53何があるというんだ
00:55:55おいエルーカ
00:55:56
00:55:58先ほどの話だが
00:56:00やはり徹底的に駆除しようと思う
00:56:03手伝ってくれ
00:56:06もちろんお任せあるよ
00:56:08駆除って何のことですか
00:56:11他の本に虫が湧いたらしくてな
00:56:14エルーカに天日干しを頼んでおいたんだ
00:56:17虫さんですか
00:56:18私もちょっと苦手です
00:56:20奇遇だな
00:56:21俺もヘドが出るほど嫌いなんだ
00:56:24その話はこれくらいにして
00:56:26次はお兄の番だよ
00:56:28シャーロットの服を選んであげてよ
00:56:30俺がか
00:56:31
00:56:32勝負を投げ出すつもり
00:56:34そんなわけなかろう
00:56:36これは勝負はここでなくても
00:56:40仕方ない
00:56:43わからん
00:56:46だったらこれだ
00:56:52どうした
00:56:58すごい
00:56:59お兄大胆すぎ
00:57:02これは違うんだ
00:57:11お兄は何をするつもりなの
00:57:19俺が教えるいけないことは散々だ
00:57:22何も考えずにただただ欲しいものをたくさん買うことで
00:57:26ストレスを発散する楽しみを教えてやる
00:57:29お手柔らかにお願いします
00:57:32ここが良さそうだな
00:57:34シャーロット何か気になるものはあるか
00:57:37とは言われましても
00:57:39遠慮するな
00:57:41これなんかどうだ
00:57:42可愛いぞ
00:57:44きもい
00:57:45
00:57:48これは
00:57:50ダサい
00:57:53ならば
00:57:56お前
00:57:57これ絶対に可愛いだろう
00:57:59最悪
00:58:02お兄正直センスゼロだよ
00:58:05何だと
00:58:09そんな魔法いいから早く再生して
00:58:16いっぱい買ったね
00:58:18どうしたのシャーロット
00:58:20まだ買い足りなかった
00:58:22逆ですよ
00:58:23私一人のためにこんなにたくさん買うなんて
00:58:26お金は大事に使ってください
00:58:29これはいけないことを教えるための
00:58:31いわば必要経費だ
00:58:33それに全て似合っていたしな
00:58:39どうしたの
00:58:44いや天然ってすごいわ
00:58:48でもお兄はセンスなさすぎだよね
00:58:52事実でしょ
00:58:55だってお兄が選ぶもの
00:58:57全部ダサすぎてほとんど私が選んであげたじゃん
00:59:00俺のセンスの良さがわからんとは
00:59:03お前もまだまだ子供だな
00:59:05負け惜しみ
00:59:07何だと
00:59:10だめですよ喧嘩しちゃ
00:59:12ご兄弟なんですから仲良くしてください
00:59:15ああすまん
00:59:17だがこれくらい喧嘩でもなんでもないぞ
00:59:19そうそういつものことだしさ
00:59:23それでも喧嘩はいけないことじゃなくて
00:59:25ダメなことです
00:59:27いいですね
00:59:29わかった喧嘩はしないと約束しよう
00:59:32エルーカにはああ言ったが
00:59:34実際のところ俺の肌色が悪くないか
00:59:37圧倒的優勢
00:59:39だがしかしシャーロットの保護者として負けるわけにはいかない
00:59:43行くぞ
00:59:44どこへ
00:59:46買い物続行だ
01:00:00この魔法車椅子いい感じするね
01:00:04魔法道具をたくめ
01:00:07あいつは置いていくとしよう
01:00:10いいんですか
01:00:12どこの工房の仕事
01:00:14僕が作ったものなんですが
01:00:16マジすごーい
01:00:19どうもどうもいらっしゃい
01:00:24アレンさんアクセサリーが欲しいんですか
01:00:27ちょっと気になるものがあってな
01:00:31やっぱりお前の瞳の色と同じ色だな
01:00:35店主殿これをくれないか
01:00:38はいよ銀貨1枚ね
01:00:40失礼はいい
01:00:41はーいどうも
01:00:43お客さんこれ金貨だよ
01:00:46いくらなんでももらいすぎ
01:00:48とっておいてくれ
01:00:50いい仕事には相応の報酬を払う主義なんだ
01:00:55もらってほしい
01:00:57まあ些細なものだから
01:01:02いいこれが一番嬉しいです
01:01:07死の呪いをかけたわけでもないのに
01:01:10心臓がおかしい
01:01:15シャロット
01:01:18痛いな
01:01:20よそ見してっからだよ
01:01:22おい俺たちを誰だと思ってんだ
01:01:24ガンクツ組だぞ
01:01:26知らんな
01:01:28だがここは恩便に済ませてもらえると助かるぞ
01:01:32おいなんだその態度は
01:01:34こいつ悩みすぎだろ
01:01:36やっちまうぞ
01:01:37自分の前方周囲をシャロットのせいにするだと
01:01:40少し痛い目を見ないとわからないようだな
01:01:44喧嘩はいけないことじゃなくて
01:01:46ダメなことです
01:01:50いや連れが済まないことをした
01:01:53非礼を罵るよ
01:01:54いざ許してやる
01:01:56ただし条件がある
01:01:58話が早くて助かる
01:02:00いくらだ
01:02:01そうじゃない
01:02:03そこの女を一晩俺らに貸せ
01:02:08見たところ結構冗談じゃねえか
01:02:11俺たちと来いよ
01:02:13こんな安物よりもっといいアクセサリーを買ってやるからさ
01:02:16困ります
01:02:18遠慮するなって
01:02:20俺らの手札天国は
01:02:25死に去らせ
01:02:26ゴミ虫が
01:02:27てめえ
01:02:28よくも俺の仲間を
01:02:31あのク
01:02:32魔法トークだぞ
01:02:33やばいぞ
01:02:34逃げろ兄ちゃん
01:02:44うちのシャーロットに
01:02:45その薄汚い手で指一本でも触れようものなら
01:02:49肉片一つ残さずに丁寧に捨てりおろすぞ
01:02:54すっきりした
01:02:56兄ちゃんやるじゃねえか
01:03:03声援感謝する
01:03:08すまない
01:03:09ケンカをしないと約束したばかりなのに
01:03:11怖がらせてしまった
01:03:17乱暴はいけませんけど
01:03:19私を助けてくださったのは分かりますから
01:03:22それに
01:03:23私がアレンさんを怖がるはずがありませんよ
01:03:27そうか
01:03:29よかった
01:03:31おや
01:03:32最初シャーロットは
01:03:34俺を嫌ってすぐに去っていくと思っていたはず
01:03:37なのに今は嫌われていなかったことに安堵している
01:03:41これがエルーカの言う変化というやつか
01:03:46どうしたんですか
01:03:47いや何
01:03:48俺としたことが
01:03:50どうやら焼きが回ったらしい
01:03:52お前にいけないことを教えるのが
01:03:54よほど癖になっているようだ
01:03:56そ、そうなんですか
01:04:00ああ
01:04:01いけないこと勝負は私の負けかな
01:04:04恋だの愛だのは
01:04:05お兄じゃなきゃ教えられないし
01:04:21うちの若い者たちが
01:04:24世話になったようだな
01:04:43さて
01:04:45どうしてくれよ
01:04:51ア、アレンさん
01:04:53大丈夫だ
01:04:54俺に任せて
01:04:57おや
01:05:02お前
01:05:03ひょっとしてメーガスか
01:05:05俺の名前がどうかしたのか
01:05:09おお
01:05:10本当にメーガスなのか
01:05:12やはや懐かしい
01:05:147年ぶりくらいか
01:05:17なんだなれなれし
01:05:20このような人間に覚えはない
01:05:23おや
01:05:24記憶力の悪いやつだ
01:05:27俺だ
01:05:28アテナ魔法学院にいた
01:05:30アレン・クロフォードだ
01:05:36大魔王殿どうぞ
01:05:37仕上げず失礼しました
01:05:40幽霊の炎の効果をやめてください
01:05:43何ひとぞ
01:05:44何ひとぞ
01:05:45何ひとぞ
01:05:48どうしようかな
01:05:50ど、どうしまったんですかおやぶ
01:05:52そうですか
01:05:53こんな弱そうなやつ
01:05:54おやぶんだれ一発せよ
01:05:56おめえらは黙ってろ
01:05:58これ以上このお方をしきりきりするんじゃ
01:06:04そうなっているんですか
01:06:06あたしとお兄のパパはね
01:06:09この国最大の魔法学校の理事長なんだけど
01:06:13エルオカさん
01:06:15お兄はその学校を史上最速の12歳で卒業して
01:06:19そのままそこで教師になった天才少年だったんだよね
01:06:26お、お許しください大魔王殿
01:06:28あんたに迷惑をかけるつもりはなかった
01:06:32大魔王の
01:06:34教師時代のお兄のあだ名だね
01:06:37大魔王か
01:06:39その呼ばれ方はひさかたぶりだ
01:06:42昔を思い出すな
01:06:45表をあげてくれメイカス
01:06:47俺は別に迷惑などこむっていないのだから
01:06:53そう、俺はな
01:06:58貴様の手下どもが害想としたのは
01:07:01俺の
01:07:03俺の
01:07:05シャーロットは俺のなんだ
01:07:08ん?
01:07:10単なる異想郎
01:07:13二人目の妹?
01:07:17もしくは
01:07:20俺の
01:07:24俺の大切な女だ
01:07:29おはようございます
01:07:31やっほー、お兄
01:07:33って、あれ?
01:07:35おにゃー
01:07:39ミヤハ、これ何よ
01:07:42ミヤハが知るわけないですにゃ
01:07:44どうしたのよ、お兄
01:07:46大丈夫ですかにゃ、魔王さん
01:07:49お前たち
01:07:51知らないうちに仲良くなってたんだな
01:07:54一体何があったのですかにゃ
01:07:58さては、お兄
01:08:00つまり、シャーロットと何があったんでしょう
01:08:04な、なぜ分かった?
01:08:06いや、逆に聞くけど
01:08:08お兄がそれ以外で悩むことってある?
01:08:11ケンカでもしたのですかにゃ
01:08:15それならまだ良い方だ
01:08:19お、お給料だなんて
01:08:21そんなの頂けませんよ
01:08:23何を驚く
01:08:25もう一ヶ月経ったんだ
01:08:27雇うと言ったからには
01:08:28当然給料は出すぞ
01:08:30でも私、できるのはお掃除くらいですし
01:08:34お金を頂けるほどお役に立てているとは思いません
01:08:38掃除も勿論だが
01:08:40岩崎だってきれいに手入れしてくれてるだろ
01:08:43お前が来てくれてから
01:08:45この家は実に快適だ
01:08:48だからこれはその働きに対する正当な対価だ
01:08:53本当にいいんでしょうか
01:08:56ああ、どうか取っておいてくれ
01:09:00分かりました
01:09:02ありがとうございます
01:09:04貯金してもいいが
01:09:06使ってみるのもお勧めだぞ
01:09:08したいこととか欲しいものとか
01:09:11何かないか
01:09:13いいえ、特に
01:09:18それじゃあ、えっと
01:09:21できたらっていいんですけど
01:09:24おお、なんだ、言ってみろ
01:09:27一人で街に出てみたいです
01:09:32街にあいつ一人で送るなんて
01:09:35猛獣の檻に下振り肉を投げ入れるようなものだ
01:09:40俺は一体どうすれば
01:09:43ええ、あのパンケーキ屋さんそんなにまずいんだ
01:09:47毎日行列すごいのにな
01:09:50あれはほとんど桜なのですね
01:09:52せよ、お前ら
01:09:54てか、シャーロットにしては珍しいね
01:09:57身バレしたらお兄に迷惑がかかるからって
01:10:00我慢しそうなものなのに
01:10:02ああ、その時もすぐ撤回したが
01:10:07す、すみません
01:10:09やっぱり今のは忘れてください
01:10:15大丈夫だ
01:10:16そんなの俺の魔法があれば問題ない
01:10:21ありがとうございます
01:10:23ああ、結局オッケーしちゃってんじゃん
01:10:27あんな寂しげに言われると
01:10:29意地でも叶えてやりたくなるだろう
01:10:32難儀なお人なのですにゃ
01:10:37初めてシャーロットが望んだこととはいえ
01:10:40どうしようもなく心配だ
01:10:43ていうかさ、お兄の悩みなんて簡単に解決するじゃん
01:10:48ねえ
01:10:49はいですにゃ
01:11:00本当に来てしまいました
01:11:03まさかこんな方法があるなんてな
01:11:06なんでこの程度が思いつかなかったんだろうこの人
01:11:10そうでした
01:11:12まずはこれを
01:11:14えらい、えらいぞシャーロット
01:11:17俺が教えた通りちゃんと地図が見られたな
01:11:22そういえばお兄、シャーロット何で町に来たがったの?
01:11:27買い物がしたいとか
01:11:29何を買うかは知らないのですが
01:11:32それとなく聞いたんだが
01:11:35それはえっと、秘密です
01:11:41教えてもらえなかったんだ
01:11:43それはショックでしょにゃ
01:11:46秘密ができたなんて自我がしっかりしてきた証だ
01:11:50えらいぞシャーロット
01:11:52次からはどんどん自己主張をしてもっと俺を困らせてみような
01:11:57きもいを通り越してちょっと心配になってきたんだけど
01:12:08ちょっと様子がおかしくないか
01:12:11これはひょっとして道を間違えてるんじゃない
01:12:15だ、大問題ではないか
01:12:22確かにこれはまずいかもですにゃ
01:12:26どういうことだ
01:12:28このまま進むとメアード地区というあんまり治安のよろしくない場所に出るかもしれないですにゃ
01:12:34なに
01:12:35入り口付近を仕切るのはサーペントファングというならずものパーティーで
01:12:40リーダーは毒蛇使いのグロウという男ですにゃ
01:12:45どうするお兄、私が偶然出くわしたふりして引き止める?
01:12:50いや、せっかくのシャーロットの初冒険なんだ
01:12:54水を刺すのは極力避けたい
01:12:57でも
01:13:00ちょっと野暮を思い出した
01:13:02この場はお前たちに任せる
01:13:05どこに行くのだ
01:13:07行ってらっしゃいませにゃ
01:13:13見事に治安の悪い方に向かってますのにゃ
01:13:16一体何の地図を見てるんだろうね、シャーロット
01:13:20次を左に曲がったらもうメアード地区に入ってしまいますにゃ
01:13:34お兄は何してるのよ
01:13:41ここは一体どこなんでしょう
01:13:47
01:13:52今日はこれはまずいってば
01:14:08死の者いただれまケスにゃ
01:14:11どうしません
01:14:15シャーロット様でいらっしゃいますね
01:14:17私グローブを申します
01:14:19前路はるばるご苦労様でございました
01:14:22ようこそマイホームへ
01:14:23歓迎いたします
01:14:28何あれ
01:14:29さあ
01:14:31何、簡単な話だ
01:14:34お兄、どこ行ってたのよ
01:14:37先回りして奴らをひねり上げておいた
01:14:40ついでにシャーロットが来たら
01:14:42体調にもてなすよう言いつけてな
01:14:44モンスターペアレントの真っ青だよ
01:14:47ああ、だからよく見ると
01:14:49どいつもボロボロなんですにゃ
01:14:52みなさん、大丈夫ですか
01:14:57えっと、その
01:14:59お怪我をされているようですから
01:15:03これ、魔法のお薬なんです
01:15:06よかったら使ってください
01:15:08ヘビさんにも
01:15:12ありがとうございます
01:15:14はい、どういたしまして
01:15:17メガニさん
01:15:20俺、俺からは心を入れ替えて真面目にいきます
01:15:24俺もです、俺も
01:15:27みなさん、どうしたんですか
01:15:30頭を上げてください
01:15:33シャーロットめ
01:15:34なかなかどうして人身をつかむのが上手じゃないか
01:15:38神話の一節のような展開ですにゃ
01:15:41それにしても
01:15:43女神様はあの大魔王とどういったご関係で
01:15:48みなさん、アレンさんのお知り合いなんですか
01:15:51知り合いっていうか
01:15:53無理やりそうさせられたというか
01:15:57喋ったらどうなるか
01:16:00おい
01:16:02相当丹念に脅されてるね、アリア
01:16:07こいつの威力は見せておいたからな
01:16:12私とアレンさんの関係ですか
01:16:20えっとですね
01:16:22私、もう帰る家がないんです
01:16:26でもアレンさんがご親切にも使用人として雇ってくださって
01:16:31だから私にとってアレンさんはその
01:16:38ご、ご主人様ですかね
01:16:45なんと背徳的かつインビラ響き
01:16:48ちょっと、鬼?大丈夫?
01:16:50こっちが胸焼けしそうですにゃ
01:16:54女神様、ひょっとして騙されてるんじゃないですか
01:16:57いや、脅されてるとかじゃねえ
01:17:00女神様とあの大魔王の組み合わせなんて
01:17:03犯罪の匂いしかしないですよ
01:17:05あいつら
01:17:08いや、自分でも分かっていることだ
01:17:12片やゴロツキも怯える大魔王と
01:17:15片や誰にでも優しい女神
01:17:19誰がどう見ても釣り合いが取れていない
01:17:23でもアレンさんはお優しい人ですよ
01:17:27何かの誤解です
01:17:30本当ですか
01:17:32あの大魔王にもそういう感情があるんだな
01:17:36それにアレンさんは私に
01:17:38いけないことをたくさん教えてくださるんです
01:17:43いけないこと!?
01:17:45ん?
01:17:48この前もアレンさんと夜通しで
01:17:51いけないことをしたんですよ
01:17:54汚いことだと分かっていても
01:17:56とっても楽しい一夜でした
01:17:59
01:18:00魔王さん
01:18:02お菓子とゲームで夜更かししただけだ
01:18:04外では言わぬように注意しておく
01:18:07それではみなさん、お世話になりました
01:18:11お気を付けて
01:18:14よし、ひとまずは何とかなったな
01:18:16でも魔王さん、シャロットちゃんは奥に進んでいきましたにゃ
01:18:21そっか、この先にはまだまだ危険なパーティーがたくさんいるんだっけ
01:18:26なんだ、そんなことか
01:18:29まさか、鬼
01:18:32これもまた簡単な話だ
01:18:36俺がこの地域一体を
01:18:38三下に収めればいいだけだ
01:18:42やっぱ馬鹿だわこの人
01:18:45人形の攻撃など
01:18:47操る指さえ見ておけば
01:18:49避けることなど容易いわ
01:18:51ほーら人狼族には聞くだろう
01:18:54特別称号の香水だ
01:18:57何回クレームをつけてきた
01:18:59厄介なお客さんたちですにゃ
01:19:02なんだと!三丫の敵はあたしの敵だし!
01:19:12いい運動になったな
01:19:14これでこの街の冒険者パーティーは完全に制圧ですにゃ
01:19:19てかさ、もう脅威もないわけだし
01:19:22シャロットを見守る必要もないよね
01:19:26理屈としてはそうだが
01:19:28シャロットとしても何を買うかは
01:19:31お兄に知られたくないんでしょ
01:19:34しかし
01:19:35ではこの先は三丫が一人でお見守りしますのにゃ
01:19:40お二人はお買い物が終わるまで
01:19:42どこかで待っていてくださいにゃ
01:19:44やったー!三丫サンキュー
01:19:58シャロット、そろそろ戻ってくるかね
01:20:04アレンサン、エルカサン
01:20:07シャロットちゃんは無事お買い物を終えましたのにゃ
01:20:11ご苦労だった
01:20:13しかし目を離してしまって大丈夫か?
01:20:16ええ、お知り合いに会ったとかでその方とご一緒ですにゃ
01:20:20もうじきこの通りに来ると思いますにゃ
01:20:24と、ところで
01:20:25一つ聞きたいことがあるんだが
01:20:27何ですにゃ
01:20:28あいつは一体何を買ったんだ
01:20:31お兄、実は何を買ったかは見てないのですにゃ
01:20:36マナー違反かと思いましてにゃ
01:20:39そうか
01:20:42あ、来たみたい
01:20:44アレンサン、エルカサン、三丫サン
01:20:47みなさんご一緒だったんですね
01:20:50お久しぶりだね
01:20:52おお、あの紙飾りの店主殿か
01:20:56しかし本当にすごい人だよ、あんたは
01:21:00何の話だろうか
01:21:03通りを歩いていると
01:21:05みなさんアレンサンのお話をしていたんですよ
01:21:08大魔王さんが町を平和にしてくれたって
01:21:13なぜだ
01:21:14なぜって
01:21:15町じゃ荒くれ者の冒険者たちが悩みの種だったからね
01:21:20それをあんたが強制的に構成させてくれたおかげで
01:21:24みんな大助かりさ
01:21:27よかったじゃお兄
01:21:29計らずも人助けになったんだね
01:21:33その通りさ
01:21:35町を代表してお礼を言わせてもらうよ
01:21:38どうもありがとう
01:21:42ただシャーロットのためにやっただけで
01:21:45よもや他人にこのように感謝されることになるとは
01:21:49わからないものだな
01:21:52いや、まあどうか気にしないでくれ
01:21:55俺は個人的な問題で動いただけだ
01:21:59面白いお人だよ
01:22:01あんたも頼りになる彼でよかったね
01:22:05あの
01:22:06いや、俺たちはそういう
01:22:10ああ、なるほど
01:22:12まあ、頑張って
01:22:14じゃ、私はこの辺で失礼するよ
01:22:17はい、お付き合いありがとうございました
01:22:21はい
01:22:27と、ところで
01:22:30えっと、その旦那
01:22:33はい
01:22:36買い物はどうだった?
01:22:39もちろんバッチリです
01:22:45ああ、それって新規オープンした宅急タブだよね
01:22:48今一番お楽しみです
01:22:51これ、デルーカさんとミヤハさんへのプレゼントです
01:22:58なんだと
01:23:01今日街に来たのって
01:23:03私たちにプレゼントを買うため?
01:23:05初お給料だと聞きましたにゃ
01:23:07本当にいただいてよろしいのですにゃ
01:23:10はい、お二人にはいつもお世話になっておりますし
01:23:15ああ、イカスタネコタンのぬいぐるみだ
01:23:18ミヤハには新しい帽子ですにゃ
01:23:21どうもありがとうですにゃ
01:23:23よかったです
01:23:26シャロット
01:23:27はい
01:23:29俺にはないのか
01:23:32鬼、魔王さん
01:23:38アレンさんに喜んでいただけそうなものも
01:23:41いろいろ探したんです
01:23:44でもどれがいいのか全然わからなくて
01:23:48お前がくれるものなら
01:23:50切手だろうが柄描きだろうが
01:23:52テレホンカードだろうがペナントだろうが鉄道の写真だろうが
01:23:55もっと言えば道端の花でも小石でも
01:23:57ミミズだってオケラだってアメンボだって
01:23:59何だってよかったんだぞ
01:24:01す、すみません
01:24:03お世話になっているのに気がきかなくて
01:24:07いや、お前を責めるわけじゃないんだが
01:24:10私はいただいてばかりで
01:24:13アレンさんのお好きなもの
01:24:15何も知らないんだと気づいたんです
01:24:20だからひとまずは
01:24:24アレンさんのローブ
01:24:26ほら裾がほつれて
01:24:29確かに
01:24:31作ろうせていただいてもいいですか
01:24:34それでその間
01:24:36アレンさんのお好きなもの
01:24:38たくさん教えてください
01:24:41次はちゃんとプレゼントが選べるように
01:24:45も、もちろんだ
01:24:48ひとつの予感が胸に広がっていた
01:24:52その時間は俺にとって
01:24:54きっとどんなものより
01:24:56はるかに値打ちがあるだろう
01:25:09かこまれて
01:25:11あなたのことを
01:25:14思う夜
01:25:18手のひらが
01:25:20冷えてたの
01:25:23その優しさに
01:25:26触れるまで
01:25:29流れ星が
01:25:32導いた
01:25:35この景色
01:25:38忘れない
01:25:40ずっと
01:25:45ねえ
01:25:47歌わせて
01:25:50あなたが教えてくれたこと
01:25:56感情も感動も
01:25:58ひとつひとつが
01:26:01幸せで
01:26:03ねえ
01:26:04歌わせて
01:26:07あなたと出会えた喜びを
01:26:13知らなかったの
01:26:15世界はこんなに美しい
01:26:23Love you

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