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00:00では次です
00:01先進国の中で死刑を行う数少ない国が日本とアメリカです
00:07ただ日本とは異なりアメリカでは死刑制度を維持するためには情報公開が必要だという立場です
00:15私たちはアメリカの刑務所を訪れ死刑囚のインタビューを行いました
00:21アメリカのある死刑囚に宛ててメッセージを送ったのは先月のことだったテキサス州で強盗殺人事件を起こしたレイナルド・デネス死刑囚だ数日後本人から面会に応じる旨のメッセージを受け取った
00:48人生の意味をよりよく理解できるようあなたに会って考えを分かち合えることを楽しみにしています
00:58私たちは獄中のデネス死刑囚を取材するためアメリカテキサス州に向かった
01:10デネス死刑囚がいるポランスキー刑務所には現在も200人近くの死刑囚が収容されている
01:21こちらポランスキー刑務所の面会室です
01:25死刑囚はこちらのブースに連れてこられてここで面会をすることになります
01:29面会ブースに姿を現したデネス死刑囚
01:37アクリル板越しに汽車と向き合った
01:42刑務官が後ろ手の手錠を外す
01:50相手の声を直接聞き取ることができないため
02:00受話器を通しての会話となる
02:03恐れるものは何もありませんから生きる目的は分かち合うことですみんなが幸せになるため私の思いや考えを共有したいと思います
02:26アメリカで最も多い数の死刑が執行されたテキサス州
02:32死刑の首都と呼ばれる町がある
02:36人口およそ4万8000人のハンツビルだ
02:41州内で唯一処刑室があるハンツビル刑務所では
02:47アメリカで死刑執行が再開された1982年以降最多となる594人が処刑されている
02:58ハンツビル刑務所の近くにあるこちらの墓地には
03:03家族から遺体の引き取りを拒否された死刑囚たちの墓標が立ち並んでいます
03:09世界では死刑廃止が潮流で現在7割の国が死刑を行っていない
03:16先進国の中で死刑執行を続けているのは
03:21日本とアメリカの一部の州だけだ
03:24アメリカでも死刑執行を続ける州は減少傾向だが
03:30テキサス州には州が死刑制度を維持するのであれば
03:35市民に死刑の実態を公開し議論してもらいたいとの考え方がある
03:41テキサス州の刑事司法省の公式ホームページには
03:47死刑囚の名前や人種など全員分のリストが公開されています
03:51このうち1人をクリックしてみると
03:53死刑囚の顔写真や事件の概要、被害者の人種など
03:58その情報は詳細にわたっています
04:00日本では死刑囚は親族など限られた人以外には
04:07会うことも手紙のやり取りをすることさえできない
04:11一方、テキサス州では確定死刑囚になっても
04:18面会や手紙、メッセージを送受信するネットサービスを使って
04:23外部との交流を行うことが可能で
04:27デネス死刑囚もその一人だ
04:30どう過ごしているかって?
04:36朝はトレーニングです
04:37武道やテコンドー
04:40飛んだり体をひねったり
04:43ダンスも好きです
04:45以前は無知だったと気づくようになりました
04:52私は教育も受けていませんでした
04:55この刑務所で自分で教養を身につけてきたのです
05:00私は暗闇の中にいました
05:05愚かで自分勝手でした
05:07事件が起きたのは1996年
05:13ビルの一室にある宝石店で
05:16店主が襲われ射殺された
05:19警察は当時39歳だった
05:23デネス死刑囚と兄を逮捕
05:26翌年デネス死刑囚は死刑判決を受けた
05:32キューバで生まれ
05:343歳の時に一家でアメリカに渡った
05:38デネス死刑囚
05:39学業不審で高校を中退した後
05:45宝石賞になったが
05:46酒や薬物に溺れたという
05:49家庭を持っても妻や子供を
05:53帰り見ることはなく
05:54荒んだ生活を送った末の
05:57強盗殺人だった
05:59死刑判決をどう受け止めたのか
06:05それは始まりだと
06:07新たな生き方だと感じました
06:09刑務所に入った日に
06:11自分の人生を変えようと決意したのです
06:14獄中で聖書と出会うことで学ぶことの大切さを知り絵や彫刻などの創作活動を通して自身が犯した罪と向き合えるようになったという
06:28誰も傷つける必要はなかったと後悔しています
06:40死を恐れてはいません死は次の世界への通過点にすぎません死を恐れていないと話す一方で自身に下された判決については不満を持っている
07:10デネス死刑囚は撃ったのは自分ではないと無罪を主張したことで死刑判決を受けたからだ
07:19たくさん悪いことはしましたが
07:24誰も殺していません死刑に値する罪ではありません
07:30死刑制度についても犯罪の抑止にはなり得ないと反対の立場だ
07:40罪を犯すときに死刑のことを考えている人なんていません
07:45彼らは無知で愚かで分別がないのです
07:50人を傷つける人たちに自覚なんてありません
07:55だからこそ処罰ではなく教育が必要なのです
08:01制限時間の1時間が終わり面会は終了した
08:08被害者の遺族は死刑についてどう考えているのか
08:17私たちは事件から29年間
08:22メディアの取材を全て断ってきたという遺族のもとを訪ねた
08:29デネス死刑囚に夫を殺害されたニコール・ビソツキーさんが今回取材に応じた
08:3629年の時を経て夫の存在を知ってほしいと思ったのです
08:43彼は一人の人間で今も生きていることを
08:47ニコールさんと夫のヤノスさんは7年間の交際期間を経て結婚
08:565年にわたる結婚生活は幸せに満ちた日々だった
09:01しかし事件が全てを変えた
09:06宝石賞だったヤノスさんは仕事で面識があったデネス死刑囚に
09:14店を襲われ殺害されたのだ
09:18夫の代わりに自分が死んだらよかったと思い続けてきました
09:25それほど彼を愛していました
09:28言葉では言い表せません
09:33事件当時から捜査に携わり
09:42その後もニコールさんを支え続けてきた元捜査員は
09:47デネス死刑囚について死刑は当然と話す
09:52死刑はアメリカに存在する制度です
09:59デネスのような人間は社会に存在する価値はありません
10:04彼らは不必要で邪悪な存在です
10:07世の中には悪が存在し
10:10それがデネスです
10:12一時は生きる気力を失ったニコールさんだが
10:19夫が築いた事業を潰したくないという一心で
10:23店を守ってきた
10:2429年の歳月が経った今
10:28死刑判決をどう思っているのか
10:32デネスは自分がしたことに対する責任があります
10:36彼はその責任から逃れるべきではありません
10:41生涯刑務所で罪と向き合うべきだとした上で
10:48何とか許そうと努力を続けているという
10:52私はデネスを許し幸運を祈るわ
10:58デネスの幸運を祈るわ
11:22本当よ
11:23ニコールさんがデネス死刑囚を許そうと必死に勤めるのは
11:31夫が慈悲深い人間だったからだという
11:35私にはデネスの魂を許す気持ちがあります
11:42私は生きていたくなかった
11:45でも私が死ぬ道を選んだら
11:48夫は人生を無駄にするなと怒ったでしょう
11:51だから私は立ち上がったのです
11:54私は生き続けることで
11:57どれだけ夫を愛していたか証明したかったのです
12:01だから前に進まなければならなかった
12:05じゃないと私たちの愛は本物ではないということになりますから
12:10何度も死刑執行の現場に立ち会った経験から
12:19情報公開の大切さを訴える人がいる
12:23ハンツビル刑務所の刑務官だった
12:27デイビッド・スタックスさんだ
12:29今は刑務所博物館の館長で
12:35ここでは実際の処刑に使用された
12:38公主刑のロープや死死薬を投与する注射器
12:43361人を処刑した電気椅子など
12:48ハンツビル刑務所で行われた死刑の歴史が紹介されている
12:53死刑は歴史の一部でタブーではありません
13:00情報公開で死刑の実態を知らせなければ
13:05正しい議論はできないと強調する
13:08死刑囚の家族も被害者の遺族と同じくらい辛いのです
13:16最愛の人を失ったのですから
13:20私たちは事実を伝えるだけで
13:25みんなが自分の判断で決めることを望みます
13:29先月23日
13:36ハンツビル刑務所では
13:381人の死刑囚の執行が予定されていた
13:43死刑開始の予定時刻まで30分を切りました
13:47警備にあたる警察官が配置につく一方で
13:50死刑廃止を訴える人たちがプラカードを掲げて抗議しています
13:54日本では死刑執行の本人への告知は
14:01執行のおよそ90分前に行われ
14:05事前に外部に知らされることはないが
14:08テキサス州では数ヶ月前に本人や社会に伝えられる
14:14死刑は間違っているからここに来ました
14:19終身刑や有機刑でも人は変われるはずです
14:24人を殺す権利なんて誰にもありません
14:28抗議するために毎回ここに来ています
14:33反対派から少し離れた場所には
14:39死刑制度を支持する人が集まっている
14:42近隣の大学の課外授業の一環として
14:47学生や教員も死刑制度を考えるために
14:52見学に訪れていた
14:53この日、執行が予定されているのは
14:58モイセス・メンドーサ死刑囚
15:00メンドーサ死刑囚は2004年
15:05高校の同級生だったレイチェル・トールソンさんを誘拐して
15:10レイプした後殺害
15:12トールソンさんの生後6ヶ月の娘は
15:16翌日無事発見されるまで
15:19一人で部屋に置き去りにされたままだった
15:23死刑予定時刻の午後6時が近づく
15:29執行に立ち会うため
15:32メンドーサ死刑囚の妻や友人が処刑室に向かった
15:37被害者の遺族や許可を得たメディアもその後に続いた
15:48これはハンツビル刑務所内にある処刑室だ
15:52ベッドの左手にある部屋に
15:57被害者の母親ら遺族と記者が
16:01執行を見届けようと待機する
16:04その隣の別の部屋には
16:06メンドーサ死刑囚の妻や友人が立ち会った
16:11午後6時3分
16:14処刑室に入ったメンドーサ死刑囚
16:186時4分
16:20ベッドに横たわり
16:22革ベルトで固定された
16:256時7分
16:28メンドーサ死刑囚の腕に
16:31注射針が刺される
16:32そこから伸びたチューブは
16:35右手にある小さな穴を通じて
16:38医療チームの部屋にいる医師とつながった
16:426時20分
16:45メンドーサ死刑囚は
16:47被害者の両親と親族の
16:50一人一人の名前を呼んで
16:52最後の言葉を述べた
16:55レイチャルの命を奪ってしまったことを
17:00お詫びします
17:01私には何も言えないし
17:04どんなことも
17:06償いにはならないと
17:08分かっています
17:09心から申し訳ないと思っていると
17:13知ってほしい
17:14今日ここに来てくれて
17:16ありがとうございました
17:186時21分
17:21医師がチューブに致死薬を投入
17:25その後
17:28メンドーサ死刑囚は
17:2910回ほどいびきをかいた後
17:32動きが止まった
17:346時40分
17:36死亡が確認された
17:39失効に立ち会った
17:45AP通信のマイケル・グラチェク記者
17:48これまで400人以上の処刑に立ち会ってきた
17:53メディアが立ち会って監視することは絶対に必要です
18:00当事者ではない誰かが
18:03死刑が法律に則って行われていることを
18:07確認する必要があるからです
18:10娘を殺した男の最後に立ち会った
18:14トールソンさんの母親が
18:16記者会見を行った
18:18私のたった一人の娘は
18:22とびきりの人気者で
18:24いつも笑顔でちょっと打ち気な娘でした
18:28面倒さは20年間死刑囚でしたが
18:33今日それが終わりました
18:35彼は何の痛みもなく眠りました
18:38私の娘は
18:41そんな風に死ねなかったのに
18:45先進国の中で死刑を行う
18:50数少ない国である日本
18:53十分な情報開示が行われているのか
18:57裁判員裁判で死刑判決を出した
19:02米沢俊康さん
19:04死刑の実態を知らされていない自分が
19:08極刑の判断を迫られたのは
19:11不当だと感じている
19:13情報開示だとか
19:16そういったものをオープンにした上で
19:19そういった判断に関わるのはいいのかなとは思いますね
19:25今の状態では私は二度と関わりたくないです
19:30米沢さんが裁判員を務めたのは2009年に川崎市のアパートで津田純敏元死刑囚が
19:42王やの男性ら3人を殺害した事件
19:46津田元死刑囚は一審の裁判員裁判で死刑判決を受けた
19:54自分たちが選んだこの判決でこの人は亡くなってしまうんだと思って
20:02辛い気持ちでした
20:07津田元死刑囚はその後自ら出した酵素を取り下げ死刑が確定した
20:16米沢さんは十分な情報や知識がないまま結論を出した死刑で刑が執行されることにおびえてきたという
20:272014年死刑についての情報開示が進むまで
20:37執行停止を求める要請書を作成し
20:41別の事件で裁判員を務めた仲間たちとともに
20:47法務省に提出した
20:49しかし法務省は1年10か月後
20:54裁判員が判断した死刑では初めてとなる
20:58津田元死刑囚の刑を執行した
21:02それから10年
21:07死刑についての情報開示は進んだのか
21:11正直10年前と何も今変わってないような状況ですので
21:19もう少しというか本当に真剣に考えてほしいなというのがあります
21:29米沢さんらは裁判員制度がスタートして15年となった
21:36節目の去年
21:37死刑について国民的議論を促すよう求める
21:42新たな要請書を法務省に提出した
21:46その中では情報開示が進むアメリカを例に挙げている
21:52アメリカって全部オープンにするような国だと思いますんで
21:57どこまで必要かっていうのは
22:00議論していく中で決めていけばいいことだと思いますんで
22:04まずはその議論の場を
22:06作っていただけるようにということで
22:08という思いですね
22:10死刑の実態を知らなければ
22:15正しい議論はできない
22:17それが米沢さんの思いだ
22:20とにかくなんかもう
22:22クローズド空間の中でやられてるなっていう
22:26印象を受けます
22:28今の制度自体に関しては
22:30やっぱりそうやって重い責任を負わすんであれば
22:34もちろん知る権利あると思いますんで
22:38その辺をきっちりしていただきたいな
22:41まずはちょっと議論してみようよっていうのが
22:45もう率直なところですね
22:48取材した西村ディレクターです
22:52お願いします
22:53西村さんはこれまで日本で確定死刑囚となった
22:57多くの殺人犯と面会取材をしてきましたけれども
23:01今回のアメリカ取材何を感じましたか
23:04そうですね
23:04日本では死刑確定後に取材をすることは
23:08事実上不可能で死刑の実態をこれまで伝えてこれなかったという
23:12すごい無力感を覚えてきましたが
23:14今回アメリカで実際に死刑囚のインタビューや
23:17執行の詳細を伝えることで
23:19改めてその実態を伝えることの重要さを痛感しました
23:22死刑という言葉だけでは抽象的なイメージしか湧きませんが
23:28日々死と向き合う加害者の葛藤や
23:31今も続く被害者遺族の苦しみ
23:33そして実際に執行現場で命が失われていく
23:38その詳細を知ることなく
23:39死刑の持つ意味を理解することはできません
23:42死刑の是非については
23:45さまざまな意見があることは当然ですが
23:47尊い命を奪うという死刑という制度を維持するのであれば
23:51国は国民一人一人に対して正しく議論してもらうためにも
23:56積極的な情報開示が必要であることは言うまでもありません
24:00日本でもこの裁判員制度で
24:03誰もが死刑の判断に関わる可能性があるわけですから
24:06情報公開の必要性というのは
24:08ますます増しているようにも思うんですけれどもね
24:11その通りだと思います
24:12一部の裁判員だけに負担を背負わせるのではなくて
24:16私たち市民一人一人がこの死刑の問題について
24:19人事ではなく自分事として考えることが大切だと思います

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