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2009年7月25日に、わずか51歳の若さで亡くなったマレーシアのヤスミン・アフマド監督。日本では東京国際映画祭をはじめとする映画祭上映や自主上映を重ねてたくさんのファンに愛され、2017年に代表作『タレンタイム〜優しい歌』(09年)が初の劇場公開となってロングランヒットを記録した伝説の監督である。そのヤスミン・アフマド監督の『タレンタイム』とともにもう一つの傑作といわれる『細い目』(04年)がヤスミン没後10周年を記念し公開される。

この度公開された予告編は、本編同様少年が母親に詩を読む場面からはじまる。「不思議ね。文化も言葉も違うのに、心の中が伝わってくる」という母親の言葉から、民族や宗教が異なる男女の恋という、多民族国家マレーシアならではの背景がさりげなく伝わってくる。香港映画のスター、金城武が大好きなマレー系少女オーキッドは、露店で海賊版の香港映画のVCDを売る中華系の少年ジェイソンと出会い恋に落ちる。民族や宗教の違いを越えて、2人は惹かれ合うが、ジェイソンの秘密が明らかになり……というストーリー。

本編での恋に落ちるシーンの演出の鮮やかさはまさに必見だが、この予告編でもその瞬間を垣間見せ、いっそう本編が見たくなる。タイトルの「細い目」とは、中華系の目が細いことをからかうマレーシアの言い方だが、この映画をきっかけに、チャーミングな目と価値観さえも変えたという。世界の映画界にヤスミン・アフマドという才能を知らせただけでなく、マレーシア社会をも変えた2004年の傑作が、ヤスミン監督の没後10年を記念して日本全国で上映されることはとても喜ばしいこと。ますますヤスミン監督のファンが増えることは間違いないだろう。

タイトル:細い目
原題:Sepet
英題:ChineseEyes
監督:ヤスミン・アフマド
出演:シャリファ・アマニ、ン・チューシオンほか

『細い目』は10月11日よりアップリンク吉祥寺ほかにて全国順次公開となる。