Yamaonna Nikki - 山女日記 ~女たちは頂きを目指して~ - E3

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00:00山を上る。それは、どの石に足を置くか、一足一足、果てしなく探すこと。まるで人生のようです。
00:16私のせいでお客さんが一人遭難しかけて、正直私なんかにガイドが務まるのかって。
00:23この仕事を続けていく厳しさは、立花さん、あなたが一番よく知ってると思う。
00:28山に登ってみませんか。もしかしたら、あなたの探し物もそこに。
00:58山を上る。
01:28Good morning, Yuzuki-san.
01:33What the hell!
01:58お待たせしました。お天気良くて良かったですね。ラッキーですね。
02:09立花さん、お願い。立花さん、それ終わったら巻き割りお願いします。
02:21はい、了解しました。
02:24立花さん、一休みしない?おいしいリンゴよ。山木さんから。
02:32いただきます。
02:35美味しい。
02:38そういえば、立花さん、帽子作ってるんだって。
02:44はい。山木さんに聞きました?
02:47余った皮や布の切れ端を欲しいってあなたが言うから何するんだって言ったら、パッチワークの帽子を作るんだって。いつも被ってるあれ?
02:57はい。ツヤのお客さんに頼まれちゃって、その方が結婚するって言うんで、お祝いにということでつい引き受けたんですけど。
03:07じゃあ、いっそそれ副業にしちゃったら?
03:11いや、副業なんてまさか。私、趣味の範囲で作ってるだけだから。
03:15だけど、あなただっていつまでもここでアルバイトってわけにいかないし、登山ガイドの仕事だけじゃなかなか食べられない。現実は現実。
03:28現実か。
03:30ああ。
03:44手作り?才能あると思う。私も一つ作ってもらいたいくらい。
04:00手作り?才能あると思う。私も一つ作ってもらいたいくらい。
04:16器用なもんだね。
04:18うん。
04:20どこで習ったの?
04:22うん、別に習ったってわけじゃないんだけど、お母さんが昔帽子教室をやってたの。私も身を見真似で習った。
04:34あ、ねえねえ、これ見てさ、なんか思い出さない?
04:41なんかって?
04:44発泡剤、中華料理の。
04:46あった、ほら。
04:50ああ、この間の。
04:55この間二人で見た景色、あんな素敵な瞬間なんてもう二度と訪れないかなって思って、写真以外の別の形で残しておきたかったんだ。
05:08意外とロマンチストなんですね。
05:17ユーズキさん、いるんでしょ?ユーズキ、ユーズキ、ユーズキ。
05:23はい、はい、はい。
05:27何、今ちょっと忙しいんだけど。
05:29え、誰かいるの?
05:30ああ、いない、いない、いない。
05:32だったら。
05:35行くぞ、支度しろ。
05:40はあ?
05:43エイトノット。
05:46はい。
05:50はい。
05:52ハーネスに装着。
05:54はい。
06:00はい。
06:02できんじゃない?
06:04あれから随分復習しましたから。
06:09インクノットで確保。
06:12はい。
06:14ぴったりつけろって言っただろ。
06:17ここまで必要ですか?
06:19私は山岳ガイドじゃなくて登山ガイドです。
06:23クライミングは私の守備範囲を超えてます。
06:26ガイドに守備範囲なんてないよ。
06:28いざって時のために覚えておいて損はない。
06:31でも私はあんなことは一生できないし、やろうとも思いません。
06:39私は私なりの役割っていうか、ガイドとしてできることっていうか、むしろそっちを教えてもらいたいです。
06:46ユズキさんってさ、本当に山が好きなの?
06:52結局人生の腰掛け程度に考えてるんじゃないの?
06:57山も仕事も。
07:01あ、お兄ちゃんいたの。
07:03ユズキさんも。
07:05あ、ハルナちゃん。
07:07ハルナちゃんだったんだ、あそこにいたの。
07:10よくあんなことできるよね。
07:12すっごい気持ちいいよ。
07:13心が自由になれるっていうか、自分が自分じゃなくなるっていうか。
07:18ユズキさんも一緒にどう?
07:20いやいや、私はいいよ。心臓たまるから。
07:25あれ?てかお兄ちゃんさ、私が紹介した会社どうした?
07:30ほら、松本の旅行代理店。
07:33確か今日だったよね、面接。
07:35あっけ。一見にすっかり忘れてた。
07:37は?信じらんないんだけど、人がどれだけ頭下げて頼んでやったと思ってんの?
07:43こんなとこでユズキさんのんきにくどいてる場合じゃないでしょ。
07:47最初から行く気なんてねえよ。
07:49団体登山のガイドなんて俺は絶対ごめんだ。
07:5220人、30人の年老と金魚の糞みたいに引きずれて。
07:55そんなの山をけがす子以外の何者でもない。
07:58俺は命張って山と向き合ってんだよ。
08:01お金がないって言って騒いでたのは誰ですか?
08:05いい歳して妹から借金までしてさ。
08:08命張るも何もないわ。
08:10税金で食ってるガキが何やねん。
08:13そうもいいんだ。
08:15なんだよこの野郎は。
08:17ちょちょちょちょちょちょ。
08:19キジマ君も少しは春菜ちゃんの気持ち考えてあげたほうがいいよ。
08:23ちょっと現実ってものと向き合ったほうが。
08:27自分は棚にあげて説教か。
08:30ほんと誰かさんそっくり。
08:32誰かさんそっくり。
08:36誰かさんって誰よ。
08:42もうほんとに頭ごらんのバカ。
08:47お茶?ビールも一杯。
08:53でもさ、私もなんか不安になってきた。
08:58なんで?
09:02考えが甘かったかなって。
09:05好きなことだけやってても食べていかれないんじゃね。
09:10でも柚木さんは団体のツアーコンだって頼まれればやるでしょ。
09:14あいつ違うもん。
09:19この仕事ってさ、保険とかもなかなか入れないし、
09:24考え始めると夜とか不安で眠れなくなるときあるよ。
09:28結局嫌な言い方かもしれないけど世の中お金なのかもね。
09:34どんなに理想を高く掲げても、最後はそこに流れつく。
09:43前の仕事のほうがよかった?
09:47うん。
09:49あったらいいじゃん。どうせ過去には戻れないんだし。
09:54何とかなるよ。
09:55何とかなるよ。
10:01そっか!
10:03ほんと女好き勝手なことばっか。
10:10なんか似てない?柚木さん。お母さんに。
10:15生き方的に。
10:26生き方的に。
10:38すごい!
10:47よし。
10:55私が初めて登った白馬大石形のイメージ。
10:59私の山の出発点。
11:25山の出発点
11:43お疲れ様でした。
11:45お疲れ様でした。
11:55山の出発点
12:06山の出発点
12:15紅葉綺麗ね。
12:18見て見て大地。
12:25紅葉綺麗ね。
12:37着いた?
12:39でも時期みたい。よく寝てたよ。
12:42ごめん。
12:44明け方までバイトでしょ。大丈夫?
12:47十分寝た。もう満点。
12:51見て大地、紅葉すごい綺麗だね。
12:55美味しそうなお蕎麦屋さんあったんだよ。
12:58やっぱり富士山よりこっちにしてよかったでしょ。
13:01どうかな。
13:03でもいい。今回は全部大地に任せたんだから。
13:06交通費とかは後でちゃんと生産したね。
13:09大丈夫。今回は俺が全部エスコートする。
13:12そういう約束でしょ。
13:14舞ちゃんには次出してもらうってことだよ。
13:26綺麗綺麗。見て。
13:29すごい。
13:43今俺たちがいるここが兎平。
13:46ここからまたリフトを乗り継いで八方アルペンラインを登ってから松崎。
13:55どう?なんか良さげでしょ。
13:57うん。楽しそう。
14:03でもさ、どうしてこの山選んだの?
14:06だから富士山の旅行演習ってことで。
14:09だったらもっと近場で良くない?丹沢とか奥多摩とか。
14:14そういう合理的なところ。舞ちゃんらしいよね。
14:19合理的?私が?
14:22そう。舞ちゃんの合理主義者。
14:25理想だけじゃ大勢の部下なんて扱えない。でしょ?
14:29私はあなたに余計なお金を使わせたくないだけで。
14:34だからそれが合理主義ってこと。
14:39でも俺舞ちゃんのそういうところが好きだな。
14:42一緒にいて安心できるっていうか、頼りになるっていうか。
14:47年上だから?
14:49あ、ほら見てあれ。すっごい綺麗。
14:55ほら。
15:06前に橘さんにやっていただいた菅池の水場召喚紹介。
15:11あれが結構評判良くて今度も橘さんにお願いしたいってリピーターさん結構いらっしゃるんですよ。
15:18ありがとうございます。でもあの時は木島がリーダーで私はサブでした。
15:22木島さんか。
15:24彼はいいです。
15:26どうして?
15:28だってお客さんは平気で怒鳴るしゆずは聞かないし結構クレームきたんですよあの時も。
15:35どうもすみませんでした。
15:37何も橘さんが謝らなくても。
15:39じゃあ私はこれでよろしくお願いします。
15:41はいどうもよろしくお願いします。
15:46大ちゃんお昼どうする?
15:48もうお腹すいた?
15:49だって朝もコンビニのおにぎり一個だし。
15:53じゃあここで食べよっか。カツカレーが名物だって。
15:57カツカレーはちょっと。
15:59軽食メニューもあるよきっと。ちょっとさトイレ寄ってくから先行ってて。
16:04分かった。大ちゃんはカツカレーね。
16:06そう。
16:08すみません。
16:10カツカレーと山菜うどんください。
16:14はいわかりました。お席でお待ちください。
16:16はい。
16:18カツカレーと山菜うどんです。
16:21女性だけでもできる。全員でそれを証明しましょう。
16:25はい。
16:27じゃあもう一頑張りね。
16:29はい。
16:43梅本さん。
16:45橘さんここで何してるの?
16:48ああいやあの梅本さんこそ何を?
16:53ああ父さん。
16:55ああ父さん?
16:58まあ一応。
17:00梅ちゃん知り合い?
17:02あの会社の昔の同僚の橘さん。偶然出会ったのびっくりした。
17:08あの橘です。梅本さんの同僚で昔一緒に働かせていただいてます。
17:15あのおのって言います。梅ちゃんとは。
17:17ああやっぱりご飯はいい子?
17:19いやいやカツカレーは?
17:21歩く前に食べたら胃もたれるよきっと。
17:23だってお腹空いたって言ってたよ。
17:25橘さんまたね。
17:27元気でね。
17:29ああ橘さん肝心のこと一つ忘れてました。
17:31教師にも。
17:33ガイドさんの紹介で橘さんの写真載せますけどよろしいですね。
17:36ああはい。
17:38写真一枚送っていただけますか?
17:40メールで結構ですので。よろしくお願いします。
17:42了解しました。
17:44ガイド?
17:46ああうん。まあなんでもない。
17:51新州山案内人組合登山ガイド橘優月。
17:57橘です。
17:59これって橘さんの今のお仕事?
18:01うんそう。
18:03いつから?
18:05まあ会社辞めて比較的すぐ。
18:07どうしてこんな仕事?
18:09いやまあいろいろと。
18:11いろいろって?
18:13ああうん。そうね。
18:17お待たせしました。かつカレーと山菜うどんです。
18:20ありがとうございます。
18:22うん。おいしい。
18:25おいしい?よかった。
18:27うん。だいちゃんのかつカレーは?
18:29めちゃくちゃおいしいよ。
18:36上本さん。
18:44上本さん。
18:50橘さん前から登山なんてやってた?
18:53うん。会社辞める2年くらい前。
18:56全然知らなかった。
18:58ガイドってどんなことするんですか?岩登りとか。
19:01いや私みたいな登山ガイドっていうのは一般登山道が専門で
19:06漂壁登帆とかクライミングとかっていうのは
19:09山岳ガイドって言って別の資格が必要になります。
19:12そうなんだ。
19:14いやでもすごいな。誰でもできる仕事じゃないし。
19:17ねえ前ちゃん。
19:19食べていけるの?それだけで。
19:21うん。正直言って厳しい。
19:24まあ私なんかまだ駆け出しで仕事がないし
19:27アルバイトとかしながら自分一人で食べていくのがやっと。
19:29楽しい。
19:32うん。楽しい。
19:35あの頃と比べてどう?今のほうが充実してる?
19:41うん。
19:48乾杯しよ。
19:50乾杯って何に?
19:53同士。
20:00同士?
20:03乾杯!
20:08今からじゃあ山の上で一泊ですね。
20:11はい。唐松の商城山荘を予約しました。
20:15雨具とか持ってますよね?
20:18今日は寒気が入って不安定だから
20:21午後から少し荒れるかもしれません。
20:23持ってます。
20:25橘さんは登らないの?
20:26私はツアーの打ち合わせに来ただけだから今日は。
20:31そう。会えてよかった。
20:35私も。
20:37じゃあ元気で。
20:39二人とも楽しんできてください。
20:41はい。
20:43じゃあ。
20:45ありがとうございます。
20:46大体さ、梅本さんは自分ってものがないのよ。
21:01やっぱり。
21:03大事なのはオリジナリティ。
21:07オリジナリティ!
21:10待って!
21:12橘さん。
21:14今日明日って何か予定ある?
21:17いや、特にないけど、なんで?
21:21だったら、お願い。
21:24二日間私たちをガイドして。
21:28いや、急に言われても。
21:31もちろんお金は払う。
21:33いくらなの?二日間で。
21:35高いと思うよ。ですよね。
21:37ああ、組合の規定でお二人二日間で六万円弱かかります。払うわ。もちろん私が。
21:46今回は全部俺がエスコートする。費用も俺が全額支払う。そういう約束だよね。
21:52わかってる。でももう少し彼女とお話がしたくなったの。こんな機会滅多にないから。ねえ、お願い。
21:58だったら、こうしない?
22:01今日は私がお二人を案内します。行けるところまで。
22:05あくまでも私個人で仕事じゃなくて、そしたらお金もかからないし、あとは二人でごゆっくり。
22:12一人で頑張ってるあなたにただ働きなんかさせられない。
22:16私は正式にオファーしたの。あとはあなた次第。
22:28一泊二日ね。装備は?あ、わかった。犯人なら大丈夫よ。任せといて。
22:36じゃあお客様に情報聞いて、もう一度連絡ください。よろしく。
22:44昔のお友達にばったり会ったんだって。八方池山荘で。そしたらね、なりゆきでガイド頼まれちゃったって。
22:53友達って?男?
22:56何心配してんの?池山君。
23:00駆け出しのガイドにタクシー感覚で仕事されちゃたまらんなって思っただけです。
23:05じゃあ行ってきまーす。
23:07はい、いってらっしゃい。
23:09お客様に受け付けてね。
23:16マジで大丈夫かな?
23:18大丈夫。
23:20頑張って。
23:22大丈夫?梅本さん。
23:25慣れてくれば呼吸法楽になるから。何なら登りに楽な呼吸法も。
23:31大丈夫。心配いらない。これでも私は…昔?
23:36あ、何でもない。
23:40ちょ、大丈夫。撮るとき言ってよ。
23:43あ、ごめん。消す?
23:45ちょっと見せて。やだ、消して。
23:48いい顔してるよ。頑張って。
23:49なんで消してよ。
23:51いいよ。
23:53何?
23:55じゃ、そろそろ行きましょうか。
23:58はい、ちゃんと消してね。
24:12はい、お二人ちょっとこちらの植物にご注目ください。
24:16これ、雷鳥のベッドにもなっているハイマツという低木なんですけれども、
24:22このハイマツがこの標高に生えているというのはとっても珍しい現象なんです。
24:28そうなんですか?
24:30通常このハイマツというのは2500m以上の森林限界を超えたところに生える低木なんですけれども、
24:38このハッポウオネではジャモン岩という特殊な地質のおかげでこういう低い標高のところにハイマツが生えて、
24:47で、逆にハイマツが生えるようなところではダケカンバっていったようなね、
24:52木々が見受けられるっていうのはまずないことなんですけれども、
24:55それがこのハッポウオネ特有の植生の逆転現象。
25:00ジャモン岩は本来地表に現れないが、
25:03ハッポウオネは雨や強い風の影響で地表に露出している珍しいエリアである。
25:11さっき山荘の売店で買ったの。
25:14税込み1000円。
25:16あなたの2日分のガイド料でこれが60冊買える。
25:19ガイドでこれが60冊買える?
25:29冗談よ!冗談!
25:31冗談よ!
25:33あ、そっか。
25:50うわ、綺麗だ。
25:52じゃあ、ここで一旦休憩とりましょう。
25:56出発は10分後、水分補給はお忘れなく。
26:00はい。
26:04こんなところでバテてたら、富士山なんて登れないよ。
26:08富士山?
26:10うん、なんでもない。
26:12本当はマイちゃん、富士山に登りたかったんだけど、
26:14いきなり本丸は何だから、俺がこの山。
26:16ああ、そうなんだ。
26:19うわ、すげえ。
26:21しとっちゃう。
26:24あなたが考えてることはわかる。
26:27うん?
26:29私と彼のこと。
26:31最初に会った時から聞きたくてうずうずしてる。
26:34いや、そういうわけじゃないけど、
26:37聞きたくないって言えば嘘になる?
26:40だってさ、なんか意外だったから。
26:43意外?
26:45うん。
26:46梅本さんってどちらかというと、
26:49年上の人っていうかさ、
26:51御曹師とか、お金持ちとか、
26:54そんな感じの人が好きだったじゃん。
26:57それは若い頃の話。
26:59今はそういうの気にしない。
27:03彼ね、役者さんなの。
27:06役者?
27:08舞台俳優。
27:10下北沢の衝撃団に所属してる。
27:12ジェイカー!ジェイカー!
27:14ジェイカー!ジェイカー!
27:23いつか有名になるって言ったら、
27:25夢見すぎかもしれないけど、
27:27好きなこと思いっきりやってる彼が好きなの。
27:31道理で雰囲気あると思った。
27:34そう?
27:36うん。
27:38でもさ、
27:40どこでどう知り合ったの?
27:41だって昔から演劇鑑賞の趣味なんてあったっけ?
27:46聞きたい。
27:49内緒。
27:52ダイちゃん!
27:54どんなの撮れた?
27:56結構撮れたよ。
28:06でもさ、もう少しですからね。
28:08ここ上がったらかなり景色よくなってるよ。
28:09はい。
28:11楽しみにしててください。
28:15はい、ここが神秘の池って言われてる八方池ですね。
28:20ガイドブックにも登場する絶景のスポットです。
28:24向こうには白馬山山も綺麗に見えてますよ。
28:31尾野さん。
28:33二人の慣れそめ。
28:35すごい。
28:37いいじゃない。
28:39減るもんじゃないし。
28:41離せば長くなるし。
28:44ま、幸い時間はたっぷりあるし。
28:48客は私たち。客がガイド楽しませてどうすんの?
28:53梅本さん。
28:55私たちさ、13年間も一緒に仕事してきて、
28:59実はお互いのこと何にも知らなかったのかもしれないなって思って。
29:04せっかくこうやって山に登ることになったんだし、
29:07これもお互いを知るいいチャンスかなって思って。
29:14だったら橘さんも話してくれる?
29:17ん?
29:19あなたの秘密全部。
29:21秘密?
29:23過去の恋愛変力とか、
29:25本当はどうして会社を辞めたんだとか、
29:28私だって聞きたいことは山ほどある。
29:34可能の限り。
29:35可能の限り。
29:37お答えします。
29:47あ、ちょ。
29:49またもう。
29:54じゃあ、私からね。
29:57私は新しい自分になることを決めた。
30:02大学を出て上京したのをきっかけに、
30:05私は新しい自分になることを決めた。
30:11これまでできなかったことに挑戦してみよう。
30:15今までの自分と正反対のことを最低10個はしてみよう。
30:20社会人として新しい人生の一歩を踏み出すために。
30:27ミッション?
30:29そう、ミッション。
30:31自分を変えようと思ったら、
30:33常に高いハードルを自分に課すべき。
30:36でしょ?
30:38うん、でも、
30:40ほら、小野さんの慣れそめに何も関係がない。
30:43だから話せば長いって。
30:46何の話?
30:48こっちの話。
30:50聞かせてよ。
30:57中学、高校、大学。
31:00カバンなんて入学時に買ったものを卒業まで使い倒してた。
31:05もちろん見た目より機能性重視。
31:09洋服だって流行なんて一切関係なし。
31:13一年中ジャジだったから。
31:27化粧なんて子供の頃隠れてお母さんが使って以来、
31:32学生時代なんてベビーローションに弁当だったし。
31:43じゃあ昔は全然イメージが違ったの?
31:47まあね。
31:50小学生の時、バレーブだったの。
31:57可愛い!
32:00キンタロウみたい。
32:03ごめん。
32:05可愛い。そろそろ行こうか。
32:09でもね、当時のあだ名は本当にキンタロウの金茶。
32:13チビッコワンパク相撲で優勝してからずっとだって。
32:18相撲って全然イメージないよね。
32:22だからミッションが必要だったの。
32:24会いたかったな、その頃のマイちゃんに。
32:27あたそれ言う。
32:31で、ミッション4は?
32:34読書をする。
32:39成績が悪いのを部活のせいにするなってバレーブの監督に言われたから、
32:45試験勉強だけはちゃんとやったけど、読書なんてする暇は全くなかった。
32:51でも今は好きな作家を3人あげろって言われたら即答できる。
32:57ここにも2冊入ってるし。
33:00すごいね。
33:02で、ミッション5は?
33:04一人で外食をする。
33:07外食?
33:09部活代わりのファミレス、家族のお誕生日会。
33:13外食って自分以外の誰かと楽しむものだってずっと思ってた。
33:17でも都会に来たら全然違った。
33:22いらっしゃいませ。
33:27お一人様ですか?
33:29はい。
33:31では、お茶のテーブルどうぞ。
33:46誰も私なんか見てない。
33:52他人からあの人は一人だと同情されないことがわかれば、
33:57自分が寂しいと思うことはない。
34:01一人なら純粋に料理の味を堪能することができる。
34:06それからはもう楽しくなってきちゃって。
34:10すいません、生卵追加で。
34:13すいません、一列で。
34:15お願いします。
34:19すいません。
34:21失礼します。
34:28ちょっと待って、いきなり10年後って何よ。
34:31それでミッション6はどうなっちゃったの?
34:33だから話はちゃんと終わりまで聞いてって。
34:36ああ、ごめんごめん。
34:38それで?
34:48はい、大臣セットお待たせ。
34:51出来立てアツアツだよ。
34:53じゃあそのミッション5をクリアした後、
34:5710年後その餃子財神に通い始めて、
35:00そして小野さんと会ったってこと?
35:02焦らないで。まだ話には続き…
35:06大丈夫梅本さん?
35:08大丈夫。ちょっとひねっただけ。
35:10ちょっと見てみよう。ここに座ってくれる?
35:12大丈夫だって。
35:15触るね。
35:18どう?こっち。
35:19大丈夫?
35:21大丈夫。
35:23こっちは?
35:25うん。本当に大丈夫だから。
35:28本当?あの、本当に何か違和感あったら言ってね。
35:32うん。それより、次はあなたの番。
35:36え?
35:38私と大ちゃんの物語、後編は後ほど。次はあなた。
35:41ああ、今?
35:43約束でしょ?今さら嫌と言わせないから。
35:46俺も聞きたい。
35:48橘さんの華麗なる天真の理由。
35:51そうね。どうして山を始めたのか、まずはそこからかな。
35:56幸い時間はたっぷりあるし。
36:17何?
36:38梅本さん。
36:47女だけのチームを作って、男どものどてっ腹に重ね上げてやろうと思ってたけど、やっぱりダメだった。
36:57っていうかさ、うちの会社じゃ女がリーダーのプロジェクトなんて大体日の目を見ずにポシャるのよ。
37:05そんなの今まで嫌ってほど見てきたし、リーダーだって肩書きだけ責任だけ負わされてさ、どう頑張ったって上にはいけない。
37:14そんなのわかっちゃるんだけどね。
37:17はい、お待たせしました。
37:19あ、すみません。
37:24でも、橘さんはよくやったと思う。
37:30他の女性社員の励めになったのは確かだし、私も勇気をもらった。
37:41本当?
37:44うん。
37:46あなたは同期の誇りよ。
37:52って言っても、同期は私たちしかもういないけどね。
38:00だったら、乾杯しよ。
38:07うん。
38:09乾杯って何?
38:13同志に。
38:19同志に。
38:21乾杯!
38:25あの日はよく飲んだよね。最後の方なんか全然覚えてないんですけど。
38:31帰ったのは明け方。最後はあなたに説教された。
38:35説教?なんか私変なこと言ってた?
38:39大体さ、梅本さんは自分ってものがないのよ。
38:47やっぱり大事なのはオリジナリティよ。
38:53オリジナリティ!
38:55覚えてないんだ。
38:57ごめん。
38:59それより早く続き聞かせて。
39:02うん。
39:09ああ。
39:11ああ。
39:13ああ。
39:15うん。
39:17最低。
39:19飲みすぎた。
39:28北アルムスの絶景があなたを待っています。
39:35あなたも山に登ってみませんか?
39:39今まで行ったのが富士山と高尾山です。
39:44性格が出ますよね、山って。その人の本質が全部見えちゃうっていうか。
39:50山って何千年も前からそこにあって、その偉大さに普段なんか細かいことでクヤクヤしちゃう自分から解放されますね。
39:59世界にいると必ず誰かに比べられちゃうから誰の評判も受けなくていいっていうのが楽です。
40:09山に登ってみませんか?
40:12勇気を出して踏み出せば誰でも手が届く場所なのです。
40:18もしかしたらあなたの探し物はそこ。
40:27どうですか?
40:29素敵ですね。
40:31他にも見せていただいていいですか?
40:33どうぞどうぞ、ごゆっくり。
40:35ありがとうございます。
40:39頑張ってください。
40:41ありがとうございます。
40:43ちょっと待って。
40:45じゃあ、橘さんが一番最初に登った山って。
40:49唐松岳。
40:51まさに今私たちの探し物です。
40:54何の探し物?
40:56探し物は探し物です。
40:58探し物は探し物です。
41:00探し物は探し物です。
41:02探し物は探し物です。
41:04探し物は探し物です。
41:06唐松岳。
41:08まさに今私たちが登っているルートです。
41:11そうなんだ。
41:13私だって最初は特別な理由なんか何にもなくて、
41:17ただ現実から遠ざかれればそれでいい。
41:20そんな程度?
41:30よし。
41:32あれ?
41:36うーん。
41:55ごちそうさま。
42:00教えてくれたっていいのに。
42:06蜘蛛。
42:08蜘蛛。
42:10森の中。森の中。
42:12蜘蛛さんに。蜘蛛さんに。
42:15出会った。出会った。
42:24もうだめ。
42:27疲れた。
42:29みんな気をつけて行くぞ。
42:36山の歩き方も知らなければ、山の怖さも知らない。
42:41今考えると本当に無謀だったと思う。
43:05私がしないで下さい。
43:20教えてくれた。
43:24あなたは機嫌が悪いの。
43:26機嫌が悪いの。機嫌が悪いの。
43:35What have I done to deserve this?
43:45If I hadn't met him back then...
43:53If I hadn't met him...
43:542 years later
44:05A bear!
44:07Who's a bear?
44:09It's alive.
44:17That's all?
44:19The water's too heavy.
44:25Here you go.
44:35If you work hard and go up, you can drink some beer.
44:41It's like a steamer.
44:43It's cold!
44:45Beer!
44:48Here.
44:50Good luck.
44:54Isn't it this way?
44:59Beer!
45:01Beer!
45:03The beer is cold.
45:06It's good luck.
45:08So, what happened to the bear that encouraged you?
45:12That's not the end of the story, is it?
45:15Oh, by the way...
45:17This is where I work.
45:19Look at the kanba.
45:21The one you saw earlier, the one that grows at the bottom.
45:25This is the kanba.
45:27It's made of wood at the top of this hill.
45:30It's a very mysterious phenomenon.
45:33Isn't this tree beautiful?
45:35Yes, it's beautiful.
45:37Mai-chan, you're glad you chose this mountain, aren't you?
45:41Yes.
45:43But I still prefer Mt. Fuji.
45:47Why?
45:49Isn't it obvious?
45:54Let's speed up a bit.
45:57Can we do it?
45:59I think we can make it before that.
46:02All right! Beer!
46:05Let's go!
46:11You can take your time.
46:19If we make it to the top, we'll have one more day to go.
46:23If it's sunny, it'll be a great view.
46:26You're right.
46:28Umemoto-san, is your leg still hurting?
46:32Yes, I'm just a little worried.
46:35Let me know if you need anything.
46:37Let's speed up a bit.
46:39Yes.
46:49Be careful.
46:52Yes.
47:04Mai-chan!
47:06Umemoto-san!
47:08Mai-chan!
47:11I'm scared.
47:13I'm scared, Mai-chan!
47:16Don't move!
47:17Don't move!
47:18Calm down!
47:19Don't move!
47:26There's no guard or anything.
47:29It's not good to move around.
47:36Where's the rope?
47:39Umemoto-san!
47:40Grab the rope and wrap it around your arms!
47:42Momo-san!
47:43Hold this!
47:44Yes!
47:48It's okay.
48:00I can see the top.
48:02It's right there.
48:07Why?
48:09Why do I always...
48:12Why do I always...
48:18Umemoto-san!
48:19Mai-chan!
48:28Umemoto-san!
48:33Is that where you're looking for?
48:37Is that where you're looking for?
48:41I'm responsible for everything.
48:43Don't underestimate me.
48:44What the hell are you doing?
48:45You two are my guests.
48:47I'll make the decisions.
48:48I'm not going either.
48:49I can't reach the top.
48:51I was actually hesitating.
48:53I was wondering if my decision was right.

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