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00:001972年奈良県の山あいにある小さな村が突如人でごった返した
00:13お目当てのものとは
00:17古墳の石室の中から発見された1300年前の壁画
00:24国宝高松塚古墳壁画
00:32鮮やかな極彩色の絵画の登場は
00:37日本考古学史上最大の発見とも言われた
00:43特に注目を集めたのが
00:464人の女性像
00:49描かれた時代から飛鳥美人という愛称で親しまれた
00:55日本中で古代史ブームが巻き起こり
01:01寄付金付き切手は全国で爆発的に売れ
01:066億円以上が集まるほどの熱狂ぶり
01:10しかし30年後
01:15飛鳥美人は思わぬ展開を迎える
01:20国民の信頼を損なうことになったことを
01:23重大事として受け止めまして
01:25文化庁長官として国民の皆さんにお詫びしなければならない
01:31管理ミスが発覚
01:34カビが大量に発生し
01:37無残な姿に変わり果てていたのだ
01:40壁画の保存を巡って
01:44大論争が巻き起こった
01:47国宝アスカ美人
02:02それは世紀の発見か
02:05それとも開けてはならない
02:08パンドラの箱だったのか
02:121,300年の眠りから覚め
02:33古代の壁画が現代に現れました
02:38色鮮やかな姿に驚きです
02:42日本中が興奮したのもうなずけますよね
02:45運命の分岐点は1972年3月21日
02:55壁画が発見された日
02:58当時高松塚古墳は
03:05考古学者からほとんど見向きもされない古墳でした
03:10実は世紀の発見のきっかけを作ったのは
03:14ふるさとの歴史を愛する名もなき男たちでした
03:19第一の視点はその一人
03:25飛鳥村の村民関武志
03:28専門家でもない関たちがなぜ日本中を熱狂させる国宝を発見することになったのか
03:38村の人々が情熱を傾けた国宝発見の舞台裏に迫るアナザーストーリー
03:5150年前やからね
03:54関武志は是非見せたいものがあるという
04:01発見当日に撮影したという秘蔵の写真だ
04:081300年の封印が解かれたばかりの石室内部
04:18そしてひときわ異彩を放っていたのが
04:25なぜ考古学者でもない関が日本を揺るがす大発見に立ち会っていたのか
04:43その舞台裏には関たち村民の悲願が秘められていた
04:581970年代初め日本は高度経済成長の真っ只中にあった
05:08至る所で山は削られ ニュータウンが次々と生まれた
05:15都市下の波は静かな農村だった奈良県の飛鳥村にも迫っていた
05:24この地は1300年以上前 日本の都があった歴史的な場所
05:32ロマンあふれる遺跡が存在し掘れば何か出てくるとまで言われていた
05:39当時関は気が気でなかったという
05:45当時関は会社の経営者だったが遺跡保存のために仲間と会を結成
05:52文化財を見つけ出し自分たちで守ると声を上げ始めた
05:59席には真っ先に調査したい場所があった
06:06生い茂る竹やぶに分け入るとそこには小さな穴があり中に不思議なものがあったのだ
06:15席には真っ先に調査したい場所があった生い茂る竹やぶに分け入るとそこには小さな穴があり中に不思議なものがあったのだ
06:34一番角にね上海岸の切り石が1個だけポンとここらで上海岸の切り石って言うたら石室ぐらい作ってるかなってここかでひょっとしたら王子の赤ちゃうかなっていうことで
06:53それが 高松塚古墳だった
07:00しかし席の直感だけでは前へ進めなかった
07:10一方村民の中には遺跡の保存よりも開発を望む者もいた
07:20本民の犠牲に上に立ってこのあすか村の保存をあえて慣行されるならば私断固として反対するものであります
07:30このままでは村は不便なまま取り残されていく
07:36開発か保存か
07:40村が揺れる中あすか村の歴史に魅せられていた一人の男が大きな転機をもたらす
07:49大阪で神宮をなりわいとしていた
08:01当時あすか村へ足しげく通っていたこの男が思わぬ人物をこの地へ引き寄せる
08:11三井に針を打ってもらっていたあの松下幸之助だ
08:22あすかを守りたいという三井の思いに共感した
08:29経営の神様と言われた松下だが経済的に豊かになることだけが復興ではないと考えていた
08:40日本のねモデル精神ですな日本人のご来のね
08:44そういういいものがあるとするからね
08:46ここまでね精神復興さないといけないんですよ
08:49精神復興即それが日本の本当の復興だな
08:53松下は政府に働きかけ自体を動かしていく
09:021970年6月
09:09飛鳥村に時の内閣総理大臣佐藤英作が視察にやってきたのだ
09:18地域住民の方々がせっかくこういうようにね維持してこられたそのお気持ちにもそうためになる
09:29まあ民族の心これを保存して後世に伝えるこういうことにしたい
09:36そこで政府が打ち出したのが
09:40史跡を生かした観光開発
09:44松下は飛鳥保存財団を設立
09:51経済的に支えることになった
09:58観光客を呼び込むためまず飛鳥駅周辺の整備が始まる
10:06この絶好の機会に動き出したのが関だった
10:14実は駅の近くにあの高松塚古墳があったのだ
10:21関は新たな石室が見つかれば話題になり
10:26観光資源になると村役場を説得した
10:31高松塚石室でも出てったら見学出てるんじゃないかと
10:40大勢の人が来てもらって賑やかになったらいいのちゃうかなと
10:44そこぐらいまでしか考えてなかったですね
10:47いくつもの偶然が重なり
10:52ついに高松塚古墳の発掘調査が始まった
10:58調査は関の中学時代の恩師に依頼
11:05関西大学の考古学者阿保志義則だ
11:12人手として教え子たちを招集
11:18その一人森岡秀人
11:22荒れ果てていた古墳の発掘は重労働だったという
11:27土は硬い場木は根が張って大変な作業だったんですね
11:34つるはしつね思い草をここまでお見せくとバシッと入れるんですがそれが肩にガーンと響くような硬さなんですね肩が筋肉痛といいますかね
11:45その学生たちを助けたのは関たち村民だった
11:52そのために民宿で泊まってもらってその送り迎えもみんな知ってたし道具買いに行ったりねスコップ買いに行ったり昼弁当運ばんなんですね
12:06すでに見つかっていた切り石を頼りに掘り進めること2週間ついに石室が見つかった中には何があるのか?
12:33その2日後村役場に男が駆け込んできた
12:39発掘現場にいるはずのアボシだった
12:44それもダダダってきてえらいこっちゃえらいこっちゃということになって
12:50それはもうほらフルターたん
12:52事故でも起きたんかなと思ったらやっちゃうねえです
12:56えらいことできて何えらいこっちゃ
12:58それはもうちょっとこれから早いすぐ痛くなれこうだって現場へ
13:02関たちが石室に到着するとそこには洞窟者が開けたという穴があった中をのぞき込んだ関の目に飛び込んできたのは驚きの光景だった
13:21東のね壁面に青いのスーッと青い雰囲気でずっと行って
13:33あらもうびっくりした
13:35それはアスカ時代に描かれたと思われる壁画だった
13:47びゃっこや青龍といった包囲を司る神獣
13:55そして何より色鮮やかな人物が誰一人想像もしていなかったものだった
14:07友人は別世界やな
14:09すごかった
14:11そのね
14:13序人像ね
14:15色もきれいでした
14:17もうすごかった
14:19国際式で
14:21それから毎日行ってた
14:25興奮した席たちは夢中で写真を撮った
14:33天井までの高さおよそ1メートル
14:37奥行き2.6メートルの空間から
14:41飛走者の骨
14:43道鏡などが出土
14:45だが誰の墓なのかは特定されていない
14:53まさか日本で人物像の壁画が発見されようとは
14:59国際式のお宝を一目見ようと
15:02全国から人が殺到した
15:07松下の財団は駅前に飛鳥総合案内所を開設
15:14飛鳥美人を目玉に観光客を呼び込むことにした
15:21さらに遺跡としては初となる寄附金付き記念切手が発売
15:31爆発的な人気を博し6億円以上の寄附金を集めた
15:38その資金をもとに古墳周辺の土地を買収
15:44史跡公園が整備されることに
15:48飛鳥村には全国から観光客が訪れるようになり
15:54村は活気にあふれた
16:011300年の眠りから覚めた飛鳥美人
16:05発見した時の興奮は生涯の宝物となった
16:10日本中を席巻した飛鳥美人
16:25日本中を席巻した飛鳥美人
16:37その発見に運命を感じた男がいました発見から1年半後政府からある依頼を受け飛鳥美人と対峙した人物その男が第2の視点です
16:59平山育夫
17:04日本画の巨匠です
17:07実は壁画の美しさを記録するため日本美術界が総力を挙げ模写を制作することになったのです
17:20この出会いが巨匠の画家人生にも大きな影響を与えていきました
17:27芸術家が時を超えて古代の絵師と対話し心血を注いだ奮闘の物語
17:38その絵は現在アスカ資料館に収蔵されている
17:47特別に見せてもらった
17:51高松塚古墳壁画模写 原寸大の作品だ
18:03日本画家たちの手で汚れや壁の剥落までも正確に描かれた
18:10発見直後の壁画の様子が忠実に再現されている
18:20画家たちを取り仕切ったのは平山育夫
18:25後にシルクロードを舞台に多くの傑作を描いた日本画の巨匠だ
18:36多戒する2年前アスカ美人を模写した時の意気込みを語っている
18:44写真は形は写りますけど質感その他が違いますのでね
18:51芸術性という意味ではやっぱり描かなきゃいけない
18:54平山は写真では表現しきれない芸術性を追い求め格闘することになる
19:06そもそも本物があるのになぜ模写することになったのか
19:21実は高松塚古墳の石室は発見後間もなく国が厳重に管理し非公開壁画の劣化を防ぐため封印された
19:35そこであの美しい壁画を見たいという国民の声に応えるため
19:47模写が製作されることとなったのだ
19:55忠実に描くにはまず本物を見なければ
20:00高松塚古墳に8人の画家がやってきた
20:07画家たちは防護服に着替え封印が解かれた石室へ
20:15後退で狭い入口から中へ入り自分が模写する部分を必死に見つめた
20:23飛鳥の地で長年発掘に携わってきた考古学者イノクマ兼勝
20:34当時は奈良文化財研究所の研究員石室の管理を任される中で平山たちを案内することになった
20:46ウレタテ布施のような格好で頭からスポンと張りまして
20:51そしてこう入って張ってここまで来て
20:55顔を目的なところに当てながら見られるわけです
21:00するとこちらに集中されておりますから
21:03頭のとこや後ろのことは皆考えておられないですね
21:08後ろ下がったらあかんとかね
21:10頭気付けとかね外からどなるんです
21:14すると先生がピクッとしながら一生懸命見えはると
21:18しかし壁画を保存するには95%以上の高湿度と低温の維持が欠かせなかった
21:30壁画保護のため一人に許された時間はおよそ30分
21:38温度がね中へ入られるとね上がるんですよ
21:46温度が上がってきたらもう出てくれっていう話しょうがないし
21:50もう先生出てくださいっていうね失礼だったけれど
21:54本物のアスカ美人を見た平山
22:00この出会いに運命のようなものを感じていた
22:06これはアスカ美人発見の4年前に描いた作品
22:13ヤマタイコクのヒミコがモチーフになっている
22:18平山はヤマトの古墳には壁画はないという
22:25当時の定説を疑い
22:28ヒミコの墓になら美しい壁画があるのでは
22:32と想像した
22:34そんな矢先に無双していたような壁画が発見されたのだ
22:441300年の眠りから覚め
22:48まるで私に見つけてくれと言っているようだ
22:51壁画の模写は画家たちが手分けして行った
23:00アスカ美人を担当したのはもちろん平山
23:09大切にしたのは本物を見た時湧き上がってきた思いだった
23:16繊細にこれは日本人の感性で描いた
23:25顔の表情とかですね
23:27髪の襟元
23:29戦後もつつましやかなですね
23:32平山たちは日本の美の源流ともいえる芸術性を
23:40余すところなく伝えようと格闘する
23:44まず苦労したのは石室の壁の質感や凹凸
23:54傷の具合までも再現することだった
23:57そこで取られた方法が
24:03粘土状の絵の具5分で
24:06小さな点を置き
24:09少しずつ厚みを作っていくことだった
24:12もう一つ平山たちが特に苦労したのが
24:22引き裁だ
24:24本来は赤色黄色青色
24:29墨白
24:31という単純なんですよ
24:33それが1300年の間に時代書がついて
24:37非常に複雑な色になっているわけですね
24:41平山たちは丹念に書き分け
24:49時の経過まで思う
24:52絵の美しさとして表現しようとした
24:557ヶ月後
25:01ようやく模写が完成した
25:04有給の時を感じさせる深みのある色
25:14発見直後の美しい姿がそこにはあった
25:20絵は全国各地を巡回
25:28国宝の美しさを本物さながらに伝え
25:32大好評を博した
25:35この経験は平山の人生に
25:41大きな影響を及ぼしたと
25:44井の熊は考えている
25:45大模写の仕事ということを通しまして
25:50高松塚の重要性
25:52保存の重要性
25:54それが大きく発展して
25:56文化財全体の保存ということに
26:00関わっていかれたんだろうと
26:02平山先生にとっては
26:03そういう大きな影響を与えた
26:06一つの要素になったんだろうと思いますね
26:08実際その後の平山は
26:14世界各地で危機に瀕する文化財の保護に
26:18深く関わることになる
26:21内戦が続くアフガニスタンで
26:25貴重な石物が破壊された時にも
26:30抗議の思いを込めた絵を発表し
26:33世論に大きな影響を与えた
26:36平山たちが古墳の中で
26:41実物の飛鳥美人を見た後
26:44石室は再び封印された
26:47誰もが飛鳥美人は古墳の中で
26:59静かな眠りについていると思っていました
27:01ところが壁画の封印から30年後
27:07衝撃的な事実が判明します
27:09壁画にはカビが生えるなど
27:17発見当時の美しさは衰えるばかり
27:21早急に手を打たなければなりませんでした
27:24消失の危機に立たされた
27:29飛鳥美人の命運を託されたのは
27:32意外な人物でした
27:33第3の視点は
27:39石宿の佐野勝次
27:41石室を解体し
27:44特別な修復室に壁画を移すことになったのです
27:47劣化が著しい壁画を
27:51どのようにして破損することなく
27:53運び出したのでしょうか
27:55数々の困難に直面しながらも
28:00不退転の覚悟で乗り越えた男のアナザーストーリー
28:05石蔵文化財の修理復元に携わってきた第一人者だ
28:23飛鳥美人のピンチに人肌脱ぐことにした理由を聞くと
28:30石蔵らしい答えが返ってきた
28:32我々は医師というのはどれほど大事であり
28:36医師にどれだけの愛着を持っているかというのは
28:39我々が一番よく知っているわけで
28:41そうしたらもう挑戦性なしようがない
28:44それは佐野の医宿人生のすべてを賭けた挑戦だった
28:58ことの発端は2002年
29:01文化庁は発見から30年を機に
29:05高精細なカメラで改めて壁画を撮影
29:09しかしこの写真を見た発見当時を知る関係者から声が上がった
29:18壁画が劣化している
29:22よく見ると表面にカビが増殖していたのだ
29:28さらに2006年
29:34作業員がカビの除去中
29:37壁画に傷をつけたにもかかわらず
29:41公表しなかったことが発覚
29:46国民の非難にさらされた
29:51国民の信頼を損なうことになったことを
29:54重大事として受け止めまして
29:56文化庁長官として国民の皆さんに
29:59お詫びしなければならないと思います
30:02批判の矛先は古墳の発掘に関わった人にも向けられた
30:10そもそも石室を空けるべきではなかったと
30:16言われたことがあるんですよ
30:19高松川の調査をあなた方がしなければ
30:23壁画の損傷さえ見る必要はなかったんじゃないかと
30:27発見そういうものが古墳の壁画を台無しにしたというのは
30:31これは本末転倒といいますか
30:34当事者としては考えたくないところですね
30:38早急な対応が求められた
30:43しかし石室はあまりに狭く
30:47修復しようにも極めて困難な状況だった
30:51文化庁は保存対策検討会を設置
30:58解決策が議論される中で
31:02人が二度と入らぬよう
31:05永久に密封すべきだという
31:07極端な意見まで出た
31:10検討会の一員
31:13小妻陽成
31:16保存科学の専門家として
31:19葛藤していた
31:20もう永久に密封してしまうという考え方もありますけども
31:25そうすると何のための文化財なのかになりますよね
31:32誰も見ることのできないものを
31:34本当に文化財って言うのかっていうことになりますよね
31:38議論の果てに検討会は驚きの策を決断する
31:46壁画が描かれた石室を解体
31:5116個の石を取り出して修復するというものだった
31:57失敗すれば国宝を破損しかねない
32:02当時の担当者だった
32:06立石徹
32:07説得に追われた
32:09ここまで残ってくれていたのかというような
32:18現地保存を続けたいというこれはもうメンバーみんなの強い思いではありましたけれど後になればなるほど悪くなっていくのは分かってますしもうこれは本当に苦渋の選択
32:35もう一つ大きな問題があった壁の漆喰はボロボロで今にも剥がれそうな状態だった絵のないところの漆喰なんかをちょっと触れてみたりすると大げさな表現ですけどもマヨネーズのような状態だっていうふうにもうぐにょむにょですよね
33:03しかも亀裂がありますよ天井に立っては絵は下向いてますよと大事なものをこう運ぼうかなっていう時は下から手を当ててそっとこうやりますよねここに絵があったら手を入れられないじゃないですかそれどうやってあげるのよっていうそういうことをどうやって解決するのか
33:31やっぱり石のことをよく知ってる人でないとそういう発想は出てこないんですよね
33:40国宝の命運を託されたのが石区の佐野だった佐野には藤の木古墳で石棺のふたを無傷で開けたという実績があった石像文化財に精通する人物として白羽の矢が立ったのだしかし熟練の佐野でもちゅうちょした
34:09高松塚の石質は行海岸でできているがゆえの弱点があったのだこの方がもろいんですでね例えばこうなんですいやいやほんと一歩間違えれば国宝はこっぱみじん
34:39僕にとって一番腹の立つ嫌なことがあったんです絵だけが国宝で石は関係ないですとなったわけや最初にねそれで頭にカーンときてしまって誰に言うとんねえってことになったわけですよね
34:57そしたらもう挑戦性なしようがない
35:00佐野は石を運び出す驚きのアイデアを神妻に伝えた
35:08佐野さんがこうやって挟んであげたらいいんだと
35:14ただし闇雲に挟むと業界岸は潰れるでと
35:20でも挟む力が弱かったら落ちるでと
35:23そこの塩梅が難しいんやと
35:27佐野はクレーン会社と共同で特殊な道具を開発した
35:34その名もオクトパス
35:37タコの吸盤のような丸いゴムで挟む力は一つ一つ微妙に調整できるように設計した
35:46しかし石室を形作る石の大きさはバラバラで重いものは1.5トンもあった
35:57どうしたらすべての石を安全に持ち上げられるのか
36:02佐野は石室と同じ業界岸で実物大のレプリカを製作した
36:08そして本物通りの亀裂まで作って実証実験を繰り返した
36:20さらに16個の石の形に応じた専門のオクトパスを開発
36:30石を挟む力の加減はこれまで培ってきた職人の勘が頼りだった
36:39そして本番の日を迎えた
36:46現場にはマスコミが殺到
36:51日本中が注目する中
36:56いよいよ一つ目の石の解体が始まった
37:01石は見事に釣り上げられ
37:20無傷で修理施設へと運ばれた
37:24一つの石ごとにおよそ1週間の準備期間をかけ
37:31慎重に解体していった
37:341ヶ月後
37:41ついにアスカ美人が描かれた石に取り掛かる
37:49しかし隣の石と密着しているため
37:52両側から挟むことはできない
37:56佐野はこの難題をどう解決するのか
38:02なんと巨石を運ぶ時に使う
38:08コロで動かすという
38:13最初えっと思いましたけどね
38:15コロ
38:16コロで確かに下にこう丸太みたいな
38:18こうやって入れてこう転がすんだよなと思って
38:21どこがあるんだなと思ったら
38:24佐野はほんの少しだけジャッキアップ
38:27わずかに生まれた隙間に細い鉄の棒を差し込んだ
38:33石は動いた
38:4340センチ隣の石から離すことができた
38:50見事にアスカ美人を持ち上げることに成功した
38:58ところがその直後
39:11現場に衝撃が走った
39:16バーンと動かして
39:19えっと思って
39:20うわ何かあったなと思って
39:22慌てて行ったら
39:24アスカ美人がこう揺れてたっていう
39:26ああって思いましたけどね
39:29まさにその瞬間を
39:32カメラが捉えていた
39:34たまに今でも夢で見ますけれど
39:46嫌な夢で見ますけれど
39:48ワイヤーがスルスルスルってずれていって
39:56音というよりもむしろ
39:57ワイヤーがずれていくのが目で
40:00目の前にいましたんで
40:01外れていって
40:05ああっていうような声を出したのか
40:08出さないのかも分からないんですけれど
40:10気持ちとしてはああっていう感じですね
40:15その時はもう一瞬真っ暗ですよ
40:17もう何にももうね
40:19もうこれで終わりやっていうことを思ってるしね
40:25幸いワイヤーがずれただけで
40:31アスカ美人は無事だった
40:334ヶ月半がかりで
40:4116個の石
40:42全てが修理施設に運ばれた
40:45研究者の手によって
40:50慎重にカビの除去が進められることになった
40:532020年3月
41:0110年以上の歳月をかけ
41:05壁画の修理は
41:07ようやく完了した
41:10発見から
41:14長い間
41:15封印されてきた
41:17アスカ美人
41:18今ではこうして本物を間近で見られるようになった
41:25すごくきれいでした
41:31色がですね
41:32当時の色の輝きがちょっと想像できました
41:36本物は感動するんですよね
41:39なんかこう
41:40その当時の空気感みたいなのが伝わるように思って
41:44すごくいいですね
41:45見たい側のわがままではあると思うんですけど
41:49遺跡からしたら多分発掘されない方が良かったのかもしれないですけど
41:54私はうれしかったから
41:56ただ今は元のように建てることができない
42:03壁画が剥がれる恐れがあるからだ
42:07保存を巡る戦いは終わっていない
42:11これは修理が終わったって言っても
42:16その状況が一応維持されたっていうだけであって
42:21今後変化していく
42:235年や10年では物の痛みっていうのはそんなに見えてこないんですよね
42:30そのためには今スタート時代にいる私たちは
42:34何をしますかっていうことをやっぱり考えないといけない
42:37失敗が許されない大プロジェクトを成功に導いたものは何だったのか
42:47これはやっぱりもう日本の国語を守るんだっていうね
42:52みんなが責任感と
42:54そして物の重要さというものを認識してやって
42:59そして何て言うんですか絆っていうか
43:02みんなが一丸となってやれば
43:05少々のことができるもんだなと思いましたね
43:08大発見のきっかけを作った関
43:1490歳を超えた今も新たなロマンを追い求めている
43:20ここのね
43:23こんもりしたとこね
43:26高松塚と同じくらいの本郷があるみたいです
43:31平気が出ます
43:33まあ間違いらずに出ます
43:36次に見つかった石室が開かれる時
43:42そこにどんな物語が待っているのか
43:46パンドラの箱に最後に残されていたのは
43:51希望
43:52飛鳥美人は次の時代に希望をつないでいく
43:59アナザーストーリーズ
44:04山田太一のドラマ
44:05岸辺のアルバム
44:07モチーフは
44:08多摩川で起きた水害
44:10タブーとされてたことを破っていた
44:13名作が問いかける幸せとは
44:15BS世界のドキュメンタリー
44:20保守的な過不調性に支配されたエジプトの村で
44:23未来を切り開いていこうとする少女たち
44:26街角でのパフォーマンスに託して
44:28夢を追う自由を求めます
44:30やがて訪れるそれぞれの人生のキロ
44:40彼女たちの選択とは
44:41BS
44:42今夜11時25分
45:00今夜11時25分