ウルリッヒ・ベック『リスク社会を生き抜く6(最終回)』

  • 4 年前
ウルリッヒ・ベックの最終回の議論では、リスク社会が生み出した危機が益々拡がっており、人々は危機故に国家の殻に閉じこもり、国家民族主義に縋ろうする話から始まっている。
それは後退反応であり、益々危機を拡げ、最終的に破局(世界戦争)を迎えるとベックは訴えている。
しかし新チューリヒ新聞(NZZ)のジャーナリストが、「それは、私たちがその危険性があり、危険性が世界中に巨大となり、最終的に社会をこの方向に強い、世界を強いると言うことでしょうか?」と聞くと、ベックは一転して、そのような危機は世界市民主義の要請でもあり、希望を叶える過程でもあると説いている。
もっとも2009年のこの時点では、金融危機があるものの差し迫った緊迫感はなかった。しかし現在のコロナ危機では、世界が協働し、連帯して取組まないと、最早人類の未来がないことが見えて来ている。
何故なら貧困者を放置すれば、既に感染者が3100万人を超えて爆発的に拡がっている世界が実証しているように、コロナ危機が長期化し、世界の経済が破綻していくだけでなく、世界の人々の暮らしが破綻するからである(今後出回るワクチンが言われているように副作用があり、免疫も短期的である可能性は高いからでもある)。
そのような“危機が世界に巨大化”していくことを、ベックは希望であると断言しているのである。
誰が見ても危機が“世界に巨大化”することは絶望であり、本来なら絶望を回避する対処法を述べるのが筋である。
それはベックが絶えずポジティブであったからというより、絶えず進歩を追求して来た近代が必然的に絶望的危機に陥り、その絶望なくしては変われないというネガティブな認識があるからだと思う。
(詳しくは「ドイツから学ぼう(400)」参照)

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